ある年の冬のこと。
日頃より、宇右衛門さん事が嫌いでしょうがないある男が、「宇右衛門をからかってやろう」と思い・・、
「やぁ宇右衛門さん、今晩、うちの家で[報恩講]という法要をやろうと思っているんだ。ぜひ、おいで願えんか?」と、言いました。
「それは是非、参らせていただきます」と、宇右衛門さん。
しかし、その日は大雪の日でした。
雪の中、難儀しながら、その男の家に到着した宇右衛門さん。
なんと明かりが消えて戸が閉まっています。
実は、わざと明かりを消して、男は中で寝たふりをしていたのです。
すると、何やら外から、宇右衛門さんの声が聞こえます。
「これは何か急用が出来て、出て行かれたに違いない。せっかく来たんじゃ。外から家の中の仏様に拝ませて頂こう。」と、大きな声でお経を挙げられ始めました。
それを聞いて、自分のやっている事が恥ずかしくなった男は、戸を開けて誤り、家の中で一緒にお勤めしたという事とです。
このように、宇右衛門さんの真心は、多くの人の心を変えていきました。
妙好人 宇右衛門さんは、七十五才で往生されます。
若い頃、下駄で殴られた浄因寺の『泰凰(たいほう)』住職のことを、自分に仏さまのご縁を付けて下さった御方と、一生、そのご恩は忘れなかったといわれています。
そして、檀那寺『浄因寺』をとても大切にされました。
それで、いまではお寺をとても大事にされた妙好人ということで、境内に立派な銅像が建っています。
(『立派な妙好人[宇右衛門]を、よくぞ育てた』と、殿様が、浄因寺さまを褒めて下さり、その時に頂いたという[褒状]と[掛け軸]です。お寺で拝見しました。合掌 《浄因寺の御住職とともに》)
おしまい
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紙芝居:「播州の宇右衛門さん」(その5 最終回)
紙芝居:「播州の宇右衛門さん」(その4)
宇右衛門さんが、有名な念仏信者と呼ばれるようになった頃のお話・・。
ある日、宇右衛門さんは、あるお金持ちの家に頼まれて、その家の仏壇のお参りに行きました。
そして、お参りが済むとゆっくり立ち上がって、帰ってゆきました。
さて、その日の夜のこと。
そこの主人が、仏壇の中にしまっておいた二十五両のお金が無くなっていることに気がつきました。
「ひょっとして、犯人は宇右衛門さんではなかろうか?・・・いやいや、そんなことは決してない。」と、主人。
「でも、宇右衛門さんも凡夫のひとり。お金に困ってつい、盗んでしまったんじゃないでしょうか?」と妻。
そこで、失礼を承知で、宇右衛門さんに聞いてみることにしました。
すると、宇右衛門さん、
「はい、私が盗みました」と言ったのです。
「はい、すまぬことをしてしまいました。」と、宇右衛門さんは詫びて、お金を返したのでした。
・・ところがです。
しばらくして、そこの息子が帰って来て言いました。
「そっそのお金は私が借りたんだよ。宇右衛門さんが犯人じゃないよ!」と。
そこで、その親子は大慌てで、宇右衛門さんの家に謝りに向かいました。
すると、宇右衛門さんは「あぁっ、そうですか。・・では、私が前世で借りたお金では無かったということですね。・・あぁっ良かった」と、喜んだということです。(・・天然ちゃんか、生き仏か?)
次回、最終回 つづく
紙芝居:「播州の宇右衛門さん」(その3)
余談になりますが、宇右衛門さんは、奥さんとは縁が薄かったようです。
生涯、三度結婚されていて、その内、二人とは早くに死に別れ、一人とは離縁されたようです。(いろいろ事情があったのですね・・)
子供さんは何人か居られたようです。
そして、現在も子孫の方は、浄因寺さまの近くの立派なお家に暮らして居られます。(浄因寺さまにご案内して頂きました)
さて、ストーリーに戻りましょう・・。
立派な妙好人となられた宇右衛門さん、歳月は流れ、今では子や孫と暮らすと信心の篤いおじいちゃんになっておりました。
・・しかしです。
息子の嫁は、たいへん気性が激しく、何かと言えばすぐに仏様の話をする舅の宇右衛門が、うっとうしくてたまりませんでした。
今日も今日とて、皆で畑仕事をしている時、嫁の横着な仕事の在り様を見て、宇右衛門さんが注意しました。
すると突然、その言葉にカッときた嫁が、手に持った[木槌]を宇右衛門さんに投げつけたのでした。
木槌は、宇右衛門さんの頭に見事に(あかん、あかん)命中!
血を吹いて、宇右衛門さんは倒れました。(あぁ、バイオレンスやなぁ・・)
それを見ていた息子はびっくり!
「お前、何ちゅう事をするんじゃ!・・おっとう、大丈夫かえ?」と、宇右衛門さんを介抱すると、嫁の首根っこを捕まえて「お前とは離縁じゃ!」と叫びました。
その時、宇右衛門さんが・・、
「息子や、このおやじが悪いんじゃ。地獄一定の愚痴、浅ましい心のわしが叱ってしもうた。・・これは、まったくわしが悪い。嫁を許しておくれや。南無阿弥陀仏」と謝りました。
自分の仕出かした事の大きさに、恐れおののく嫁でしたが、この時、初めて義父の心の広さを知りました。
「お義父さん、本当に申し訳ありせんでした。私は鬼でした。どうか、どうか許してください。」と謝りました。
「いやいや、鬼の心を持つのはこのわしじゃ・・」と宇右衛門さん。
こうして、(バイオレンス親子)嫁と舅の心は一つになりました。
(浄因寺境内に建つ宇右衛門銅像)
つづく