住職のつぼやき[管理用]

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極楽の花の池

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『・・或る日の事でございます。御釈迦様は極楽の蓮(ハス)池のふちを、独りでぶらぶら御歩きになっていらっしゃいました。
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 池の中に咲いている蓮の花は、みんな玉のように真っ白で、そのまん中にある金色の蕊(ずい)からは、何とも云えない好い匂いが、絶え間なくあたりへ溢れております。極楽はちょうど朝なのでございましょう。』《芥川龍之介原作:『蜘蛛の糸』より》
ファイル 736-3.jpg(水生植物公園みずの森)
 僕はよく紙芝居に、「極楽」の風景を描くのであるが、極楽風景といえば、まずは『蓮の池』ではなかろうか?
 ホンマに極楽に『蓮の池』が、在るのか、無いのかはわからんが、とにかく極楽=蓮の池で、極楽の絵を書く度に、蓮の池ばかり描いてきた。
 ・・ただ実際は、図鑑や身近なお寺に咲く『蓮』だけを見て、描いてきた為、ほとんど想像だけの絵であり、池すべてを埋め尽くすような(あたかも極楽のような)蓮の群生を一度間近で見たいと思っていた。
 そんな時、妻が「滋賀県草津市に、『水生植物公園みずの森』という所があって、ここは琵琶湖の蓮の群生地になっていて、日本でも指折りののスケールらしいで。」と教えてくれた。
 それで、おととい、車を飛ばして行ってきたのだ。
 まさに、公園内部全体が、蓮だらけであった。
 そして、琵琶湖に面した広大な『蓮の池』のほとりを、僕も(御釈迦さまの気分で??(笑い))ぶらぶら歩いて、写真を撮った。
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 『・・やがて御釈迦様はその池のふちに御佇みになって、水の面を覆っている蓮の葉の間から、ふと下の容子をご覧になりました。この極楽の蓮池の下は、丁度地獄の底に当たっておりますから、(中略)三途の河や針の山の景色が、はっきりと見えるのでございます。』《『蜘蛛の糸』より》
 僕も、池のぎりぎり淵に、おたたたっずみになって、水の下を覗いてみた。・・そこには、何匹かのおたまじゃくしと小魚が泳いでいるのが見えた。・・この下が、地獄に通じるとは、凄い想像力やなと感心してしまった。
 その時、「あんまり、ぎりぎりまで行ったらあぶないで!」と妻に言われ、地獄イマジネーションから、僕は開放された。
 『蓮の花の何ともいえない好い匂い』と、原作にはあるので、何度も何度も(変な人に思われようが、)鼻をくっつけて、色んな蓮を嗅いでみたが、あまり、好い香りはしなかった。(僕の鼻が悪いのかもしれん・・。)
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 その後、蓮の葉の茎からお酒やミネラルウォーターが飲める『象鼻杯』というイベントに参加する。
 そこで、運転手の僕は「水」を、妻は「地酒」を蓮の茎から飲ませてもらった。(水は百円。酒は二百円。)
 茎の中を通る水の少し生臭い香りが、口一杯に広がって、最初は早く終らんかなぁと思ったが、そのうち、「あれっ、美味しいやん。もっと頂戴。」という気分になった。
 イベント職員さんに「どうでしたか?」と聞かれたので、僕は「極楽の味がしました!」と言ったら、皆、爆笑された。
 こんな風に時間を過していたら、お腹も空いて、今日は近くのレストランで食事を取ることにした。『・・極楽ももうお午(ひる)近くになったのでございましょう。』《『蜘蛛の糸』より》 おしまい

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