住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:『夫婦善哉』 その二

 この紙芝居を描くのに、原作はもとより、豊田四郎監督の昭和30年の作品『夫婦善哉』のDVDを買って何度も見た。(《柳吉》は森繁久弥、《蝶子》は淡島千景)。・・ちなみに〔森繁〕の《柳吉》は映画ではドモっていない。
 そして、話に出てくる名物《料理店》にも何度も足を運んだ。『たこ梅』おでん、『自由軒』の名物カレー。そして今は無き『だるま屋』のかやくごはん。原作の名にもなった法善寺『夫婦善哉』のぜんざい・・。原作の通り、今もどの店も庶民的な《店構え》ばかりである。
 それでは続きのはじまり~。
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 ・・駆け落ちをしたものの、又、すぐに大阪に戻って来た〔柳吉〕は、「かめへん、かめへん。詫びを入れたら、すぐに許してくれるわ」と高をくくったが、父親は許してはくれなかった。
 落ち込む〔柳吉〕に、芸者を辞めた〔蝶子〕の腹は決まった。
「家に帰れぬはワテも同じ・・。それなら、これから〔柳吉〕と一緒に苦労をする」と、二人は路地裏の二階を間借りして、《所帯》を張ることにした。・・が、
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〔柳吉〕に働きがないから、又、自然と〔蝶子〕が《出張芸者》となって働くこととなった。
 〔蝶子〕は、三味線をトランクに入れて、あちこちに行き、生活費を稼いだ。
 くたくたになって帰って来ると〔柳吉〕が食事の用意をしてくれていた。
〔柳吉〕は十一才も年下の〔蝶子〕の事を、いつしか『おばはん』と呼ぶようになっていた。
 そして「おばはん、小遣い足らんぜ」と暢気な〔柳吉〕は相変わらず、〔蝶子〕からお金をせびって遊び呆けていた。
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 ある日、〔柳吉〕は「ちょっと実家に、正月の紋付を取りに行って来る」と言って出て行った。
 〔蝶子〕は「もう、戻って来ないのではないか?」と少し心配になったが、〔柳吉〕はしょんぼりしてすぐに帰って来た。
 ・・〔柳吉〕の話によると、父親は顔を見るなり「何しに来た!」と怒鳴りつけたそうである。
 〔柳吉〕の妻は、《籍》を抜き実家に帰り、子供は今、〔柳吉〕の妹が母親代わりになって面倒を見ているそうだ。子供にも会わせてもらえず、父親は〔蝶子〕のことを随分悪く言ったらしい。
 〔蝶子〕は「ワテのことを悪く言いはんのは、無理おまへん」としんみり言った。・・が、腹の中では「ワテの力で〔柳吉〕さんを一人前にしてみせまっさかい、お父はん、心配しなはんな!」と心に誓った。
 それから〔蝶子〕はチラシを閉じて家計簿を作り、無駄を慎み貯金を始めた。
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 しかし、落ち込んだ〔柳吉〕が、その貯金を黙って持ち出し、昔の遊び友達と、全部遊んで使ってしまった。
 〔蝶子〕は怒った!
 二・三日経って、夜遅くこっそり帰って来た〔柳吉〕に、「帰って来るとこ、よう忘れんかったこっちゃ!」と言い、首筋を掴んで突き倒し、頭をコツコツ叩いた。
「おっおばはん、何すんねん!無茶しいな」と〔柳吉〕は言ったが、二日酔いでされるままになっていた。
 そんな〔柳吉〕を見て、嫌になった〔蝶子〕は、外へ飛び出し、《浪花節》を聴きに行ったが、一人では面白くなく、お腹が空いて《ライスカレー》を食べることにした。
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 「こっここの『自由軒』のライスカレーは、ご飯にあんじょう、まっまっまむしたるんで旨い!」と、かつて〔柳吉〕が言ったのを思い出し、カレーを食べていると、いきなり甘い気持ちが胸にわいてきて、こっそり家に帰ることにした。
 すると〔柳吉〕は、イビキを掻いて寝ていた。
「あほんだら・・」と〔蝶子〕は〔柳吉〕をゆさぶって顔を見た。
 そう、心では、やっぱり〔柳吉〕に惚れているのだった。
 つづく・・。


 
 
 

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