唐突ですが、あなたは《善人》ですか?それとも・・・?
これは、幸せな《悪人》たちのお話です・・。はじまり、はじまり~
(仏教もの28)
昔、ある村に、内輪喧嘩の途切れない《太郎ベエ》さんの家と、いつも平和そのものの《次郎ベエ》さんの家が、並んで建っていた。
ある日のこと、喧嘩の途切れぬ家の主人《太郎ベエ》さんは、〔どうして、隣はみんなあんなに仲良く暮らす事ができるんだろうか?〕と不思議でたまらず、隣の家を訪ねて聞いてみる事にした。
(太郎ベエ)「・・次郎ベエさん、ご承知の通り、うちは喧嘩が途切れず困っております。・・お宅はみなさんが仲良くやっておられますが、何か《秘訣》のようなものがあるなら、教えてくださいましな」
すると次郎ベエさんは・・・、
(次郎ベエ)「・・特に秘訣のようなものはありませんが、・・・あえて言うなら、うちはみんな《悪人》ばかりなので、喧嘩にならないのだと思いますよ。・・あなたのお宅は、みなさんが《善人》ばかりなので、喧嘩になってしまうんじゃありませんか?」と、答えた。
これを聞いて、てっきり皮肉られたと思った《太郎ベエ》さんはムカッとして、「そんな馬鹿な!」と言おうと思ったその時、・・家の奥で『ガッチャーン!』という大きなお皿が割れる音がした。すると・・・、家の奥からお嫁さんの声がした。
(嫁)「お母さん、ごめんなさい。私が足元を確かめなかったので、大事なお皿を割ってしまいました。私が悪うございました」と、心から謝っている声が聞こえた。
すると、続いて姑さんの声も聞こえてきた。
(姑)「いやいや、お前が悪いのではない。先ほどから片付けねばと思いながら、横着してほったらかしておいた私が悪いのじゃ。悪いのは私じゃ」と。
それを聞いて《太郎ベエ》さんは思った。
〔なるほど、ここの家族はみんな(自分が悪かった、悪かった)と思う《悪人》たちばかりだ。これでは喧嘩にならない!仲良く暮らす秘訣がわかったぞ!〕と、《太郎ベエ》さんは、《次郎ベエ》さんに篤くお礼を言って帰っていった。
・・こうして、やがて《太郎ベエ》さんの家も、自称《悪人ばかりの家》になり、いつまでも仲良く幸せに暮らしたということじゃ。 めでたし、めでたし。
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