住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:『半ごろしと本ごろし』(後編)

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それを聞いておばあさんは、キョトンとした顔をして・・、そして言った。
 「そんなに急ぐなら、この出来立ての『半ごろし』を弁当に持って行きなされや。」と。
 若者は「えっ弁当?・・半ごろし?」
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 若者が驚いた訳を話すと、おじいさんとおばあさんは、笑いながら説明した。
「あっはっはっ、旅の人。『半ごろし』というのは、この[ぼた餅]の事じゃよ。
 この辺りではなぁ、ご飯を半分つぶして、小豆をのせて餅を作るので『半ごろし』というんじゃ。「つぶす」というのを「ころす」と言う方言なのじゃな。
 又、ご飯を全部すりつぶして、餅を作るのは『本ごろし』というんじゃよ。わかったかのぉ・・はっはっはっ。」
 「そっ、そうだったんですか⁈」と若者は恥ずかしいそうに言った。
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 こうして旅の若者は、おいしい『ぼた餅』をいっぱいよばれて、又旅に出たということじゃ。めでたし、めでたし・・いやまだ早い!
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 お彼岸のお供え物といえば、この『ぼた餅』。
 なぜ、そういう名前になったかというと、春に咲く花は『牡丹(ぼたん)』。
 春彼岸には、その牡丹に見立てて丸く作り、仏様にお供えしましょう、というので『ぼたん餅』が『ぼた餅』になったとか。
 そして、秋彼岸は『萩(はぎ)』の花を餅の名に見立てて『おはぎ』になったとか。・・・知らんけど。いやほんと!
 そして、小豆は赤色。それは邪気を払う縁起の良い色という言い伝えから、当時のご馳走であった御餅に小豆を合わせて仏様にお供えするということになったそうです。
 ちなみに、ぼた餅の[本ごろし]は地方によっては[皆ごろし]とも呼ぶそうですよ。・・・おしまい

紙芝居:『半ごろしと本ごろし』(前編)

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 昔々のお話。
 陸奥の国(今の東北地方)を、一人の若者が旅をしておった。
 「あぁ、今日も日が落ちた。この辺りに宿屋はないかなぁ?・・あっ、あそこに明かりが見えるぞ。一夜の宿をおねがいしてみよう。」
 トントン、トントン。と若者は戸を叩いた。
 すると、
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 「どなたさまじゃ。」と一人のおじいさんが戸を開けて顔を出した。
 「旅の者です。今宵泊まるところが無いのです。泊めて頂けませんか?」と若者は言った。
 「おお、そうかえ。それはお困りじゃろう。さぁ、中に入って火にあたりなさい」と親切に家の中に招いてくれた。
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 家の中にはおばあさんもおって、「さぁ何もないけれど、かゆでも食べてけろや」と食事を振る舞ってくれた。
 若者は深くお礼を言って、その夜はぐっくり眠ってしまった。
 さて、その真夜中の事。
 若者はおじいさんとおばあさんのひそひそ話で目が覚めた。
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 おじいさんは「なぁ、ばあさん。明日の朝、あの旅人さんは『半ごろし』がええかのう。」と言うと、おばあさんは、
「いいえ、おじいさん。私は『本ごろし』の方がええとおもいますよ。」と言った。
 それを聞いて若者はギョッとした。
「あのじいさんとばあさんは、親切そうに見えるが実は[山賊]だったのだ!」と震え上がった。
 そして、夜が明ける前にこっそり逃げ出そうと思った。
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 次の日、若者がこっそり出て行こうとすると・・、
 突然後ろから、「旅人さん、もう出て行かれるのですか?」とおばあさんの声がした。
 「わぁ⁉助けてくれ!半殺しにせんでくれー!」と若者は叫んだ。 後編へつづく

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