昔々のお話。
陸奥の国(今の東北地方)を、一人の若者が旅をしておった。
「あぁ、今日も日が落ちた。この辺りに宿屋はないかなぁ?・・あっ、あそこに明かりが見えるぞ。一夜の宿をおねがいしてみよう。」
トントン、トントン。と若者は戸を叩いた。
すると、
「どなたさまじゃ。」と一人のおじいさんが戸を開けて顔を出した。
「旅の者です。今宵泊まるところが無いのです。泊めて頂けませんか?」と若者は言った。
「おお、そうかえ。それはお困りじゃろう。さぁ、中に入って火にあたりなさい」と親切に家の中に招いてくれた。
家の中にはおばあさんもおって、「さぁ何もないけれど、かゆでも食べてけろや」と食事を振る舞ってくれた。
若者は深くお礼を言って、その夜はぐっくり眠ってしまった。
さて、その真夜中の事。
若者はおじいさんとおばあさんのひそひそ話で目が覚めた。
おじいさんは「なぁ、ばあさん。明日の朝、あの旅人さんは『半ごろし』がええかのう。」と言うと、おばあさんは、
「いいえ、おじいさん。私は『本ごろし』の方がええとおもいますよ。」と言った。
それを聞いて若者はギョッとした。
「あのじいさんとばあさんは、親切そうに見えるが実は[山賊]だったのだ!」と震え上がった。
そして、夜が明ける前にこっそり逃げ出そうと思った。
次の日、若者がこっそり出て行こうとすると・・、
突然後ろから、「旅人さん、もう出て行かれるのですか?」とおばあさんの声がした。
「わぁ⁉助けてくれ!半殺しにせんでくれー!」と若者は叫んだ。 後編へつづく
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