『・・何ですか、これは?
ふぐの白子。
炙って塩で喰うとうまいんだ。
・・女房だ。
9年前にな、死なれちまった。
夫婦ってのはいずれ死に別れるんだが、先立たれると辛い。
きれいにして送り出した。
俺の第1号だ。
それ以来この仕事をしている。
これだってさ、
う~ん、これだってご遺体だよ。
生き物は生き物を喰って生きてる、だろ?
こいつらは別だけど。
あ~あ~・・・
死ぬ気になれなきゃ喰うしかない。
喰うんならうまい方がいい。
うまいだろ?
・・うまいっすね。
うまいんだよなぁ、困ったことに・・。』
・・以上は、映画『おくりびと』の中の山崎努さん演じる葬儀屋の社長と、新人社員の主人公のもっくんとの会話である。
これは、命を不思議さ・有り難さを考えさせられる、この映画の中のたいへん印象的な食事の場面だ。
この映画を観た時から、ずっと(一度で良いから)『フグの白子=(精巣)=命の源』を食べてみたいと思っていた。(・・あぁ、考えることが俗っぽくてすみません。[苦笑])
念願がかなった。
昨日、お葬式が終わった後、(偶然でした)お寺さん仲間の新年会がお寿司屋さんであって、そこでこの『白子』が出たのだ。
一人一個だったので、大事に味わって食べた。
濃厚な味わいで、数の子とあっさりしたチーズを混ぜたような感じで、何とも言えないおいしさだった。・・うまいんだよなぁ、これが困ったことに。
お正月から、ここんとこ、新年会が続いているのだが、昨日は、こんな昔の映画の記憶がよみがえった(贅沢な)会だった。...困った事に。