住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「素晴らしき哉、人生!」 (その5:〔最終回〕)

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 またもや世界は一瞬、眩しいほどに輝きました。
 そして気がつくと、又、元の世界に戻っていました。
 その時です。後ろから幾人かの人の声が聞こえて来ました。
「お~い、長一さーん」、「お前さーん」、「お父ちゃ~ん」、「兄さーん」と。
 長一が振り返ると、そこには、
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 妻と子、そして弟、長屋の住人の方たちが大勢で立っていました。
 「お前さん、探しましたよ。長屋の方たちがあなたの名前の書いた財布を拾ったと、家まで届けて下さったのよ。」と妻が言いました。
 長一は「・・お前っ、私が解るのかい?」と言うと、
 妻は「何、言ってるの?当たり前でしょ。皆さん、心配してあなたが自殺でもしないかと、町中探し回って下さったのよ。」と言いました。 
 その時、弟が前に出て来て「兄さん、心配したよ。」と言うと、
長一は「お前、生きてるのか?!」と言い返しました。
 弟は「当たり前だろう。それはこっちのセリフだよ。長屋の女将さんたちは、もう心配してあそこの路地裏のお地蔵さんをずっと拝んで下さっていたんだよ。」と言いました。
 長一は「あぁ・・、そうなのか。・・お地蔵さまを。あっありがとうこざいます。皆さん!」と言うと、
子供たちが「お父ちゃーん!!」と言って長一に飛びつきました。ファイル 827-3.jpg
(長一)「あぁっ、生きてることは素晴らしいことなんだ。
・・ああっ、素晴らしき哉、人生!」と、長一は子供たちを抱きかかえ叫びました。
 ・・・・。
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(一人前地蔵)「・・という訳で、今、私の身体は眩しいほどに〔後光〕が輝いておるのでございます。
 もう、半人前ではありません。
 一人前地蔵です。
 えっ?、その後〔長一〕一家はどうなったかって?
 はい、今では長一も借金を返して、皆で幸せに暮らしておりますよ。
 何っ?、お前が又魔法を掛けたのかって?
 いいえ、人の命の大切や、その絆に気づいた者は、自然と《幸せの光》が入って来るものなのでございますよ。
 皆さんも、そこんとこ、よ~く覚えておいてくださいよ。
 それじゃ、このへんで失礼しましょうか。おさらばです。・・さようなら。」 
 めでたし、めでたし。 おしまい

紙芝居:「素晴らしき哉、人生!」 (その4)

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 「お酒の飲みすぎだ。・・そうだ、貧乏長屋に行ってお水を一杯もらおう。」と、町に着いた長一は、長屋へと向かいました。
 ・・が、長屋に着いた長一はびっくり。
 長屋は誰も居ない空き地になっていました。
 「おかしいなぁ、・・確かにここは、長屋だったはずなのに・・?」
 そこで、再び私(地蔵)が姿を現し、
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(半人前地蔵)「だから言ったろう。・・お前がこの世に生まれなかったので、貧乏長屋は住人たちは、お前からお金が借りれず、皆〔夜逃げ〕してしまったのさ。・・そして長屋は無くなり空き地になった。つまりそういう事だ。」
「嘘だっ!・・これは幻だ!」と、長一は叫びました。
 その時です。
 偶然、目の前を長一の嫁が通り掛かりました。
 「あっ」と叫んで、長一はその女性の元に走って行きました。
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(長一)「おいっ、おまえ!・・お前まで私を知らないなんて言わないよなぁ?!」と、その女性の肩をつかみました。
 そして、「大変だったんだよ。・・せっかくお金を借りたのに、途中で落としてしまったんだよ。」と言うと、
 その女性は、「はっ離して下さい!私はあなたの顔も見たことありません!馴れ馴れしく触らないで下さい!・・変なことすると人を呼びますよ!」と叫びました。
 長一は慌てながらも「何を言うんだいっ!お前の夫の長一だよ。私の子供たちは、いったい今どこに居るんだい?!」とさらに聞くと、
 その女性は、「離してください!私はずっと独身です。子供も生んだことなどありませんっ!・・誰かー、助けてー!」と叫びました。
 その声を聞いて、町の人達が集まってきました。
 「どいつだ、どいつだ!娘さんをかどわかす奴は!・・お前かっ!」と、町の住人たちは棒や箒を持って迫ってきました。
 「うわーっ!」と叫び、その場から長一は全速力で駆け出しました。
(長一)「お地蔵さまー!助けてくださいー!」 
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 そして長一は、いつしか、元居た橋の上に戻っていました。
 そこで、再び私(地蔵)が、姿を現し、
(半人前地蔵)「どうだった?長一。 
・・一人の命は、大勢の人の人生に深く関わっているんだ。
・・君がこの世から欠けると、すべて何か変わってしまうのさ。まぁ、それは善いことも悪いこともあるんだが・・。
 君の場合、もし君が居なかったら、弟は助からない。そして君の妻は結婚しない。・・当然、君の子供たちは生れない。
 そして、貧乏長屋の住人たちは、大勢苦しむことにもなる。
 『自分一人が居なくなっても、世の中何も変わらない』なんて、思っちゃいけないのさ。」と言いました。
(長一)「わっわかりました。お地蔵さま、お願いです。元に戻してください!もう二度と生れなかったら良かったなんて思いませんから!」と言って、長一はその場で泣き崩れてしまいました。
 そこで、再び私(地蔵)が、「ちちん、ぷいぷいっ」と言って錫杖を振ると・・、 
 つづく(次回、最終回) 

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