住職のつぼやき[管理用]

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仏教版「クリスマス・キャロル」、紙芝居:『極楽讃歌』(後編)

「あなたにとって、一番大切な《物(モノ)》って何ですか?・・それは〔お金〕ですか?」
「人は《性格》を変えることが出来ると思いますか?・・言葉を言い換えるならば、『生まれ変わった気持ちで頑張ります!』と、よく言いますが、それって本当に可能なのでしょうか?・・又、どうすれば〔それ〕が出来ると思いますか?」
・・という《テーマ》などを、皆さんに投げかけながら、僕はこの『紙芝居』をいつも演じる・・。 それでは(後編)のはじまり、はじまり~

 ・・二つ目のお寺の鐘が「ゴオーン」となり、気がつけば、《スグベエ》の目の前に、二番目の〔お客様〕が立っておられた。
 その方は言われた。「私は〔現在〕を守護する仏、《地蔵菩薩》である。《スグベエ》よ、今から、お前が世間の人々に、どのように思われているかを教えてやろう。さぁ、私について参れ!」と言うや否や、《お地蔵》様は《スグベエ》の肩をつかみ、シュワッチ!と空高く舞い上がった。
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 そして、あっという間に《スグベエ》の店で働く〔番頭〕の《六助》の家の前に降り立った。そしてふたりは、(そぉ~っ)と中を覗いた。
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そこには《六助》と妻が、子供を見つめながら、〔囲炉裏〕を囲んで話をしていた。
 妻は言った。「お前さん、明日は〔お盆〕なので、皆でお墓参りをしましょうね・・。それにしても、あなたの主人の《スグベエ》さんは、本当にケチンボですね。夜遅くまで働かせておいて、ほんのちょっとの給金なのですから。これでは、病気の〔子供〕の薬代も買えませんよ」と。
 それに対して《六助》は、「お前、《スグベエ》さんの悪口を言っちゃいけないよ。人にはそれぞれ事情ってもんがあるんだよ。あの人も昔から、あんな人じゃなかったと思うよ。・・だけど、子供の薬代がないのには困ったなー」と言った。
 それを聞いた《スグベエ》は泣いた。「お前は、こんなワシをもかばってくれるんか!それにしても病気の子供がおったとは・・。知らんかった。許せ《六助》!」と手を合わせた。
 ハッと気がつくと、《スグベエ》は又、布団の上にいた。「今のも夢か?・・いや違う、この涙は真実じゃ・・」、と思ったその時、三つ目のお寺の鐘が鳴り、そこに最後の〔お客様〕が現れた。

 「私の名は《弥勒菩薩》。〔未来〕を司る仏である。さぁ、《スグベエ》、お前の未来の姿を見せてやる!ついて参れ!」と言って、光の輪の中に入って行った。
 光の輪から出た時、そこは《スグベエ》の店の前で、お役人が出たり入ったり、又、多くの人だかりが出来ていた。
 その人たちの声に耳をすますと、「可哀想にねー、泥棒に入られ、みんなお金を盗まれ、その驚きで〔心の蔵〕が止まっちまったんだとさ。」「可哀想な事なんてあるもんかい!みんなザマアミロって思っているよ。あんな血も涙もない男!」と話し合っていた。
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 それを聞き、顔を引きつらせた《スグベエ》は、《仏様》に無理やり、店の中につれられ、その遺体と対面させられた。
 遺体は当然の如く、《スグベエ》本人であった。
「ギャーーーー!・・お許し下さい、仏さまー!お慈悲でございます!改心致します!お助け下さい!」と、必死で手を合わせた。
 ハッと気が付くと、又、布団の上におり、そのまま《スグベエ》は倒れ込んで、深く寝いってしまった。

 やがて、「チュンチュン」と小鳥の声に起こされ、《スグベエ》は、目を覚ました。
 「なんと、ワシは生きている。それにしても何と爽やかな朝なのじゃ。・・今日からワシは生まれ変わる!きっとこれまでの事は夢ではない!仏様が、ご先祖様が、ワシを全うな人間にさせようと仕組まれたのだ!」
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 「ああ、有難うございます!これからワシは正しい人間になる!・・よし、今から《六助》の家に、薬とお金を持って行ってやろう。又、親のいない子達の為にも、何か買って持っていこう。・・そうじゃ、あの壊れたままでみんな困っている大川の橋をワシの金で直そう!・・そして今日は〔お盆〕じゃ。まず、お寺の仏様にお参りに行こう!・・そして墓参りもきちんとしようぞ!・・・おかしな事じゃ、お金が無くなる事ばかり考えているのに、なぜか、ワクワクして、とても幸せな気分じゃ!」
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 そして、その通り《スグベエ》は実行した。
 又、世の為・人の為になるなら、自分の財産を惜しみなく使い、町の為に協力し、尽した。
 そんな《スグベエ》の姿を、最初、町の皆は、うさんくさそうに見ていたが、やがて、心からの《スグベエ》のその行いに皆が感動し、最後は協力もし始めた。
 ・・やがて、血も涙もない男と呼ばれた《スグベエ》は、〔仏〕の《スグベエ》と呼ばれ、幸せに天寿を全うしたということじゃ。おしまい。

 

 
 
 

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