「さぁ、困ったなぁ・・。
『たいらばやし』さんか?
それとも『ひらりん』さんか?
はたまた『いちはちじゅうのもくもく』さんやろか?
それとも『ひとつとやっつでとおきっき』さんか?
せや、これみんな言うて歩いたろ!・・そしたら、誰ぞ親切な人が、『定吉どーん、こっちでっせー。』と教えてくれるかもしれん。
よっしゃ、大きな声で言うてこましたろ。・・『たいらばやし』さーん、『ひらりん』さーん、『いちはちじゅうのもくもく』さーん、『ひとつとやっつで、とおきっき』さーん。
・・・なんか、おもろなってきたな。・・せや、歌にしたろ!
『た~いらばやし』か、『ひらりん』か~。『いちはちじゅうの~もっくもく~』、『ひとつとやっつで、とおきっき~』。たーいらばやしか・・。
その時、その大きな声を聞いたホンモノの『平林(ひらばやし)』さんが現われました。
「なんや、けったいな歌を唄て・・。誰かと思たら、定吉どんやないか⁈」
「あれま、本町の『ひらばやし』さん。???
・・ちょ、ちょっと待ってくださいや。
『たいらばらし』?・・『ひらりん』?・・
おしいっ!
あんたには、用はない。」
さぁ、どないでしたか?
このように、私が書きました『醒睡笑』には、おもろく、(無理な)教えもちょっと入れ、そして『落ち』でまとめて、全一千三十九作の小話に、仕上げましてんで。
この手法が、のちに芸能『落語』へと変わり、わてはいつしか、『落語の祖』と呼ばれるようになりましたんや。
さて、そろそろ終わらなな。
それでは、最後は掛詞(かけことば)で、まとめさいてもらいまひょ。
『策伝落語と掛けまして、策伝が終生愛した[椿(つばき)]の花とときます。
その心は、
どちらも、落ちて、麗しい。』 おそまつ