住職のつぼやき[管理用]

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ボツにした『紙芝居』

 僕の作る紙芝居に(構想したが、)『ボツにした幻の紙芝居』という物がある。
 それは、昔、隣町で実際起った事件『河内十人斬り』をモデルにした紙芝居だ。
 これは明治時代に起こった、痴情と怨恨が絡む残虐な事件を題材にした話だ。(今では多々ありそうな話ではあるが?・・)
 僕は、人情ものの心温まる話も好むが、人間が起こす悪業の話(何でそんな事するねんなぁ、しゃあない奴ちゃなぁという話)も好むのだ。

 この、当時の大事件。世間は(デリケートなところがあるにも関わらず)タブーにせず、『河内音頭』の元(歌詞)にもして、何度も(この殺人者たちを)芝居小屋など劇場でお芝居の主人公にしている。(今ならテレビワイドショーが黙ってない話題なのだ)
 なぜだ!・・残虐な事件なのに、不思議すぎる? 
 これは人間のどうしようもない(仏教でいう)[業]が絡む何かがある。 そんな匂いがする。

 この二人の極悪な殺人者たちは、地元ではなぜか?「・・あれは悪いあほな奴やっちゃ、どうしようもないバカ者や。・・けど、どこか気の弱いあほやったそうやで。・・わしのお爺さんから聞いた話やけどな。」と、なぜか?好意的ともとれる部分をぼやかしてお話される。
 僕がインタビューした人のほとんどが、そうであった。
 けど、この話、今からそう遠くはない明治時代の話でもあり、事件の被害者の方々の子孫も居られるのだ。
 この事件をフィクションにして、脚色し紙芝居にして、人間の(やってはいけない)[業]をテーマにした作品を作ろうと思っていたのだが、・・やっぱり止めた。
 この紙芝居の構想を、或る檀家さんに話していたら、「住職さん、その紙芝居は作るのを止めた方がええで。その話を聞かれて嫌な思いをする人も居るかもしれん。又、住職さんの紙芝居は『人を助ける』・『人の気持ちを救うもの』やとわしは思うから、その話は住職さんが作るものと違うとも思うねんで。」と言われたからだ。 
 そうこう、いろいろ考えた上で、この紙芝居はボツにしたのである。
 

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