住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「子供を亡くしたゴータミー」〔完全版〕中編

 仏教経典によると、この物語の主人公〔キサー(『やせっぽち』という意)・ゴータミー〕の婚家先の様子も、少し述べられている。
 どうやら、ゴータミーの嫁ぎ先の家は、『大金持ち』であったらしい。
 しかし、ゴータミーは〔キサー=痩せている〕と呼ばれているように、貧乏人。
・・そんな彼女が縁あって、お金持ちの家に嫁いだのだ。さぞかし肩身は狭かったであろう。・・いじめにもあったかもしれない。
 がしかし、そんな彼女も、跡継ぎの男の子を生んだのちは、回りの目が変った。・・そう、彼女はようやく、大切にされ始めたのである。・・が、その子供が亡くなった。 彼女のショックは余りあるであろう。 ・・それでは〔中編〕をどうぞ。
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 お寺に着いた〔ゴータミー〕は、お釈迦様に訴えるように跪いて言いました。
 「お釈迦さま。この子の病気を治して下さい! 皆は「死んでいる」と言いますが、そんな馬鹿な事があるはずがございません。・・どうか、この子をお救い下さい!」と。
 そんな〔ゴータミー〕をじっと見ておられたお釈迦様は、やがて、こう言われました。
 「わかった、ゴータミーよ。 お前の子供の病気を私が治してあげよう。・・それではまず、《ケシの実》を少々、ここに貰って来ておくれ。 ただし、一度も《お葬式=死者》を出した事のない家から貰ってくるように。
・・そうしたら、私がお前の子供を治してあげよう。」
 その言葉を聞いて〔ゴータミー〕は、「はい、わかりました!・・今からすぐに貰ってきます!・・坊や、もうすぐお薬を上げますからね」と、子供に頬ずりをすると、再び町へ向かいました。
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 「ゴメン下さい。すみませんが、この子に薬の《ケシの実》を少し分けて頂けませんか?」
 農家の主婦は、快い返事をして、《ケシの実》を家の奥から持って来てくれました。
 「有難うございます。・・ところで、御宅は『お葬式』を出された事がありますか?」
 怪訝な顔で〔ゴータミー〕を見ながら、主婦は答えました。
「・・はい、昨年、主人を亡くし『お葬式』を出しました。又、その前の年には、両親も亡くしました。・・でも、いったいなぜ、そんな事を聞かれるのですか?」
 〔ゴータミー〕が訳を話すと、主婦は目頭を押さえて言いました。「お気の毒に。・・《ケシの実》は、どこの家にでもあるでしょう。・・しかし『お葬式』を出した事の無い家はねぇ・・。見つかると良いですね。」
 〔ゴータミー〕は、お礼を言うと、次の家を尋ねることにしました。
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 しかし、『お葬式』を出したことの無い家は、なかなか見つかりません。
 「そうだわ、お金持ちの家なら、死んだ人は居ないかもしれない!」
 そう思った〔ゴータミー〕は、大金持ちのハート・ヤマー家(笑えよ、すまんのぉ・・今回ここしか笑うとこありませんから。今うちによ~く笑とって下さい!)を尋ねました。
 「ゴメン下さい。・・御宅は死んだ人は居ませんよねぇ」
 それを聞いて、大富豪は言いました。
 「何をおっしゃいますやら。・・先日、私は病気で妻を亡くしまして、もう毎日が虚しくて、寂しくて・・。お金があっても、こればっかりはどうにも・・。」
「・・あぁ、そうなんですか。・・お気の毒に」と、〔ゴータミー〕の口から初めて『お気の毒に』という言葉が出てきました。
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 その後、何軒も何軒も、いろんな家を尋ねて廻りましたが、『お葬式』を出した事のない家は見つかりません。
 最後に、町外れの『一軒や』を尋ねた時、一人のお爺さんが、笑いながら答えました。
「あんたは、可笑しな事を聞きなさる。・・まぁ、わしは婆さんと二人暮らしじゃがな、さーて、これまで何回『お葬式』を出した事か。わしの親に婆さんの親。事故で亡くなった兄弟もある。ひぃふうみぃよぉ・・。何度も何度も悲しい別れを出した。・・それにもうすぐ、わしらの番じゃろうなぁ・・ふぁっ、ふぁっ、ふぁっ」と、お爺さんは笑いました。
 今の日本とは違い、大昔のインドでは、皆が《大家族》で生活をしていた為、『お葬式』を出した事の無い家は、一軒も無かったのですね。  つづく

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