住職のつぼやき[管理用]

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昼間の人魂(ひとだま)

 昨日は、特養老人ホーム『白寿苑』の月例〔法話会〕の日であった。そこでの印象に残ったお話を一つ書かせてもらう。
 僕が『苑』に着いたのは午後6時40分頃で、まだ始まるまで20分程時間があった。・・が、すでに二人のご婦人が待っておられた。
 そのお一人が、僕の顔を見るなりこう言われた。
 「・・住職さん、私ね、昼間に人魂(ひとだま)見たことありますねん。主人が戦争で《シナ》に行って戦死した時刻に、私、大阪の《松屋町》で人魂を見たんです。・・後で戦友さんに聞いたら確かに主人が亡くなった時間やったんです。住職さん、信じてくれはりますか?」と・・。
 話の脈略がなくて、突然のことで「はい。そんなことがあったんですか」としか言えなかった。
 そしたら、まだ話に続きがあり、その女性は興奮して「こんな〔人魂〕を見るなんて、私は何か悪い事したんでっしゃろか?」と続けられたので、思わず僕は「それは違うと思いますよ。おそらくご主人は、奥さんに最後の挨拶にお見えになられたんじゃないですか」と言った。
 ご婦人は少し安心して「前にも母が亡くなった時、四十九日までは〔夢〕に出てきてくれたのに、それから一切出てきてくれませんねん。・・〔何か私悪いことしたんやろか?〕と思いましてね・・」とゆっくり言われた。
 僕は「大丈夫ですよ。お母さんは心配させまいと〔夢〕現れんのと違いますか。・・僕はそんなことあると思います。信じますよ」と言った。
 ほっとされたのか、「そうですか、おおきに」と言われ、それから何も言わなくなられた。
 おそらくこのご婦人は誰かに〔この話〕をしたかったのだろう。又、この会話に2回出てきた〔私何か悪いことしたんやろか?〕という言葉の奥には、このご婦人の心にずっと潜んでいる〔何か後ろめたい気持ちと不安、(又、何かしらの後悔の気持ち)〕があるのだろうと思う・・。
 89才になられたこの女性に、これからもずっと僕は寄り添っていってあげたいと思った。
 
 

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