住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居『まは、さてあらん‥』(その3 最終回)

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「そんな事もございましたねぇ‥」と恵信尼様は答えられた。
親鸞聖人は続いて、「恵信尼よ、あれから18年が経つ。わしの他力の信心も確固たるものになったと思っていた。
‥が、しかしじゃ、この風邪の高熱の苦しみの中、わしは夢の中で必死でお経を読んで仏様に救ってもらおうとしていた‥。
 お経の文字が一文字一文字、光り輝きはっきり見えたのじゃ。
 その時、わしは気がついた。
『ああ、又やってしもてる。』と。
 あれだけ(18年前に)反省したのに、又同じような事をしている自分がいる。
‥なんと、まだ『仏様の功徳にすがろうとする』自分が残っている。
 人間の煩悩、いやわしの煩悩とはなんと強いものか!と思い知った。
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それでわしは『まは、さてあらん』=(また、やってしまった。でもこれからは、絶対止めなあかんな)とつぶやいた訳なのじゃ。
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「このような強い煩悩があっても、阿弥陀仏という仏様は必ず我々を救ってくださる。
煩悩あるがままに、救いとって下さる阿弥陀仏さま、我々は喜ばねばのう。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。」
そして親鸞聖人は、それからしばらくして風邪の症状も改善され、お元気になられたそうです。
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そしてこのお話は、妻の恵信尼様が、お手紙として娘さまに書かれて、後世に『親鸞聖人の寛喜の内省』と呼ばれて大事に残されております。
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(稲田御坊西念寺 茨城県)
※『まは、さてあらん』という言葉は、いろいろな解釈があります。
 浄土真宗聖典註釈板などには、「やはり、そうであったか」と現代語に訳されていたり、又、「これからはそうしよう」と現代語解釈されていたりもします。あまりに短い文なので、解釈が難しいそうです。ちなみに、ぼくは、拙我流で、『ああ、またやってしもた。これからはやめとかなあかんなぁ』としました。変な解釈訳ですんません。合掌
終わり

紙芝居『まは、さてあらん‥』(その2)

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親鸞聖人は昔話を思い出され、語り始めました。
「恵信尼や、お前も覚えていよう。‥あれは旅の途中であった。
わしらは越後(新潟県)から、関東(今の茨城県辺り)に入った時。そう、今の上野の国(今の群馬県辺りか)じゃったかのう‥。
そこは大変な飢饉で苦しむ村じゃった。
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食べる物も無く、餓死した人の山ができて、泣く子供が大勢居た。
村人たちは、旅の途中のわしらに物乞いしてきたが、元より何もないわしらは何もやれんかった。
そこで‥、
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わしは思いついた。
『この人達のために『浄土三部経』を、一千巻読んで仏様にすがろう!と。
それしかわしは何も出来ないのだから‥、と。』
そしてわしはお経を一心に読み始めた。
それから4、5日経った頃、わしは気がついたんじゃ。
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 『わしは間違っておった!』と。
わしは功徳を頂こうとして、仏様にお経をあげておった。
 しかし、すでに仏様は我々を救う為にお念仏という功徳を下さっていた。
この上、何を頂こうというのか!
わしのすべきは、仏様の有り難さと感謝を説く事。それだけだ。
 ああ、わしは間違えておった。まだわしの信心はぐらついておる。‥反省をせねばと経典を、読むのをやめた。
 ‥昔、このような事があった。
それを今、鮮明に思い出したのじゃ。 つづく

紙芝居『まは、さてあらん‥』(その1)

『まは、さてあらん‥(あかん、またやってしもた、これからはやめとかな‥)』〜寛喜3年 親鸞聖人59才のつぶやき〜
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『まは、さてあらん(あかん、又やってしもた、これからはやめとかな‥)』と突然、親鸞聖人は布団の中でつぶやかれました。
寛喜3年(1231年)4月、これは親鸞聖人が風邪をひかれて、何日も寝込んでおられた時のお話です。(『恵信尼消息(内容は恵信尼様から娘への手紙の一つです)』より)
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 寝床でつぶやかれたお聖人のこの一言、妻の恵信尼様は聞き漏らしませんでした。
「あなた、どうされましたか?夢ですか?‥寝言ですか?」と尋ねると、親鸞様は「いやいや、寝言では無い。(お漏らしでもない‥こんな事は言ってない、筆者失礼) 恵信尼や、夢を見てな。それで昔あったある事を、思い出していたんじゃよ。‥そう、それはこんな事じゃった。」とお聖人は昔話を語り始めました。
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「‥そう、あれは今から18年前の事。
わしが40才を過ぎた頃じゃった。」 つづく

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