・・現在、もう一本、作り掛けの『紙芝居』がある。
題名を『良寛(りょうかん)さまの涙』(写真)という。
こんな話だ。
昔、良寛さまという、心清らかなお坊様がいた。
良寛さまは、名主の長男であったが、出家をした為、実家の仕事は弟が継いでいた。
ある日、弟が良寛さまを訪ねて来た。
悩みがあったのだ。
弟には、一人息子がいるのだが、放蕩が過ぎて一向に働かない。それを良寛さまに、説教してもらいたく訪ねたのである。
「説教などとてもできない。人間は説教などでは変わらない」と断る良寛さまであったが、弟は「息子は良寛さまのいう事なら聞く」と頼んで帰った。
そこで、良寛さまは弟の家に行く。
そして、放蕩息子と会って談話をするのだが、一向に説教はしない。
やがて、三日が経つ。
そして結局、何も話さず、良寛さまは帰るしたくをする。
がっかりする弟夫婦。
しかし帰り際、良寛さまのワラジのひもをくくるのを手伝っていた放蕩息子の頭の上に、水が一粒、二粒。
見上げると、良寛さまが自分を見て泣いている。
「はっ」と気づく息子。
言葉はなくても、言いたいことはすべて解ったのだ。
結局、良寛さまは何も言わず帰って行ったが、それ以来、息子の放蕩は直ったという。
以上がストーリーである。
実は、これによく似た悩みを僕自身が檀家さんから聞いた。
結局、何も言えない僕は、この紙芝居を作って、持って行くしかないのだ。
こんなことしか、できないのである。