さて、この紙芝居もいよいよ終わりに近づいて参りました。
それでは、最初に少しお話しました、『才市さんのつののある肖像画』のエピソードをお聞きください。
ある日、才市さんは同じ町に住む画家の先生に、自分の絵を描いてもらおうと頼みに行きました。
そして、できた絵を一目見るなり、才市さんは、「この絵は私に似ていない。私の絵じゃない。」と言いました。
「ムッ」とした画家の先生は、「どこが似ていないのですか?」と問うと、
才市さんは「私はこんな良さそうな人間じゃない。鬼のような恐ろしい心を持って、人を憎んだり、怨んだりしとります。」と答えました。
困った画家の先生は、「ではどうすれば、あなたに似るのですか?」と、さらに問うと、
才市さんは「頭につのを描いて下さい。」と、答えたのでした。
そして、完成した絵が、今も安楽寺さまに飾られている有名な『才一さんの肖像画』なのです。
(余談ながら、僕は実物のこの絵を見たことがある。・・画家の先生は、はたしてつのを描いた後、完成作品をどのような気持ちで眺められたか?これは私の作品じゃないと思われたのではなかろうか?・・はたまた感心されたか?商売やから何でもええわと思われたか?わからん。)
このような詩が残っています。
『心も邪見、身も邪見、つのをはやすが、これが私くし。あさまし、あさまし、あさましいや。ナムアミダブツ、ナムアミダブツ』。
次回、最終回。つづく