・・・どれぐらい時間が経ったでしょう。
ふと、耳をすませば、目の前の〔岩の裂け目〕から、こんこんと湧き水が流れている、そんな音でメロスは気がつきました。
メロスは両手で、その水を一口すくって飲み、「ほっ」とため息をつきました。
この時、メロスは夢から醒めたような気がしました。
「おおっ、歩ける。」
肉体の疲労回復と共に、わずかながら〔希望〕が生れました。
(・・余談ながら、僕はこれと同じような話を〔比叡山延暦寺〕の『千日回峰行』を達成された〔酒井阿闍梨〕から直接お聞きしたことがある。・・酒井師は『千日回峰行』の途中、その疲労困憊から、山の中で倒れ込み『回峰行』を諦めかけた事があると、おっしゃっておられた。・・しかし、目の前の清水を一口飲むことによって回復し、又『回峰行』を続けることができたとおっしゃられた。それを比叡山で聞いた僕は思わず、『メロスと一緒やん!』と心の中で叫んだのであった。・・余談おわり)
「まだ日没までには間に合う・・。 私には待ってくれてる人がいるのだ。
私は信じられている。
私の命などは問題ではない。
私は〔信頼〕に報いなければならない。
今はただ、その一言だ!
走れ、メロス!」
メロスは再び走り始めました。
『そうだ、メロス!・・寛平ちゃんも頑張ったぞい!』 つづく