住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「続・古事記 お隠れになったアマテラスの神」その3

 ・・ここまでの「あらすじ」に、まったく関係のない話。
 アマテラスの女神が〔洞窟〕にお隠れになり、世界が真っ暗闇になる話はあまりにも有名で、たいていの日本人なら知っている。
・・が、しかし、なぜ「お隠れになったのか?」という理由を知るものは、少ないのではないだろうか?
 出来の良い姉と、常識はずれの暴れん坊の弟との諍いが、やがて姉の苦悩を招き、大きな騒動(神話の場合は『天の岩戸隠れ』)へと発展する。(スケールは違うが・・)それって最近見た、山田洋二監督の映画「おとうと」と一緒やん。
 女優:吉永小百合さんは姉の『アマテラス』、そして暴れん坊の弟は笑福亭鶴瓶氏は『スサノウ』の神か? 重ね合わせば似てるような気が・・。今も超昔も〔親兄弟の諍い〕の悩みって一緒・・か?
 そしてひょっとして、この映画の元ネタって『古事記』?・・余談でした。
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・・さて、話のつづきじゃ。
 弟〔スサノウ〕の神の乱暴に、ほとほと手を焼いた、姉〔アマテラス〕の神は、「あぁ、あんな弟が居るなんて、もう私は恥ずかしくて耐えられません。・・もう私は誰にも会いたくありません。・・岩屋に隠れることに致します」と言って、『天の岩屋(岩戸)』にお隠れになってしまわれたんじゃ。
 太陽の光の神であられる〔アマテラス〕の神が、お隠れになってしもたんじゃから、その瞬間から世の中、大パニックじゃ。
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 この世はたちまち、《闇》に覆われてしもうた。
 何もかもが、暗闇に包まれ、やがて《禍(わざわい)》が広がり出したんじゃ。
 そこで、困った〔地上の神々〕は、集まって会議を開くことにした。
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 その中の思慮深い〔オモヒカネ〕という神が、リーダーになって会議は進められ、ここに、人類の存亡がかかった《大作戦》が決行されることになったんじゃ。・・まぁ今から、見ればたいした作戦ではないんじゃが・・・。
 〔オモヒカネ〕の神は、皆に言った。
 「Aチームの皆さんは、ニワトリをたくさん集めて下さい。
 そして、Bチームは、大きな鏡を作って下さいな。
 そして、Cチームは、鏡を飾る〔御幣〕を作って下さい。
 ・・それと、え~と、たしか踊り上手でボディコンの〔アメノウズメ〕の神と、そのファンクラブの〔おたく〕会員たちを、テンションを挙げて呼んでおいて下さい。
 そして、力自慢の〔タズカラヲ〕の神も、呼んでおくように頼みます!
・・・さぁ、皆さん、作戦開始です!」 つづく
 

紙芝居:「続・古事記 お隠れになったアマテラスの神」その2

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 「スサノオ! ここから一歩たりとも入ってはいけません!!あなたはこの《高天ヶ原》を奪いに来たのでしょう!」
 と、姉の〔アマテラス〕の女神は叫んだ。
 それを聞いてびっくりした弟の〔スサノオ〕の神は、
「ちっちっ違いまっせ、ネエちゃん! おいらは、お姉ちゃんに〔お別れ〕に言いにきたんでごわんど。決して、侵略しに来たんではないぜよー。信じておくんなはれっちゃ!」と、色々な方言を混ぜ込み、必死で弁解した。
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 やがて、必死に弁明する〔スサノオ〕の誠意は伝わり、姉の〔アマテラス〕は、誤解を解き、二人はようやく仲直りをしたんじゃ。
 ・・が、しかし、時間が経つにつれ、
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 〔スサノオ〕は、「よーく考えてみたら、なんでいつもオイラだけ、皆からこんなにイケズされなあかんねん! えーい、どうせオイは邪魔者じゃっどん! よーし、この腹立ちをあっちこっちにぶつけて暴れ回っちゃる!」と、ヤケクソになり、あちこちで乱暴を始めたのだった。
 そして、ついに、その乱暴によって、人が亡くなるという事故が起きてしまったのじゃ。
 姉の〔アマテラス〕は、その悲報を聞き、それは、大きなショックを受けたんじゃ。
 そして、「あぁっ、あんな乱暴者の身内がいるなんて、なんて恥ずかしいことなの・・。いっそのこと、私はこの世界から身を隠してしまいたい・・」と、人類史上初、最大の〔引きこもり〕を決意したんじゃ。
 つづく

紙芝居:「続・古事記 お隠れになったアマテラスの神」その1

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 昔、むか~しの大昔のお話。
 この「紙芝居」の〔第一部〕で、「日の本の国は〔イザナキ〕と〔イザナミ〕の夫婦の神によって完成した」と、お話したのぉ~。
 これは、その後のお話じゃ・・。
 いわゆるエピソード2じゃ。
 そう、無事に日の本の国が完成したまでは良かったのじゃが、妻の〔イザナミ〕の神は亡くなり、後に残された三人の子供たちは、夫の〔イザナキ〕の神によって育てられる事になった。
 やがて、三人のお子は、無事成長された。
 ・・そして、姉の〔アマテラス〕の神は、《天の世界》を任される事になり、
 弟の〔ツクヨミ〕の神は、《夜の世界》を任されることになった。
 そして、末っ子の〔スサノオ〕の神は、《海の統治》を任される事になったんじゃ。
 しかし、じゃ・・。この末っ子の〔スサノオ〕の神がいかんかった。
 この神が泣き虫で泣き虫で、大人になっても、「お母ちゃんに会いたい~、お母ちゃんに会いたいよ~」と、『となりのトトロ』のメイのように、泣き続けておったんじゃ。
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 それをじっと我慢して育てておった、父の〔イザナキ〕の神じゃったが、ついに堪忍袋の緒が切れた!
 「これ、スサノオ! いい大人が毎日毎日泣いてばかりおって! そのゆえ海は荒れ、地上は禍(わざわい)が満ち溢れてしまったではないか! お前にはあいそが尽きた。・・勘当じゃ!ここから出てゆけ!!」と、父から職を解かれ、追い出される事になってしまった。
 〔スサノオ〕は、「トホホホ・・、ついに勘当か。・・そうだ、ここを出てゆく前に、お姉ちゃんに一言、別れを告げに行こう・・。」と、〔スサノオ〕は、姉のいる天の《高天ヶ原(タカマガハラ)》に向かうことにした。
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 ・・が、弟の〔スサノオ〕が、天界に向かって来ているという噂を聞いた姉の〔アマテラス〕はびっくりしたんじゃ。
 「ええっ、あの泣き虫で乱暴者の〔スサノオ〕が、こちらに向かっているですって?!
・・きっとあの子は、この《高天ヶ原》を奪いに来るのだわ!」と、勘違いし急いで武装し、〔スサノオ〕を待ち構えることにしたんじゃ・・。 つづく

《次回予告》
 さぁ~て、次回の『続・古事記』は・・、
 「スサノオっす。・・父ちゃんには追ん出され、姉ちゃんには誤解され、オレって何でこうなるの?・・ちくしょう、ムシャクシャしやがるぜ!ちょっくら、暴れてやろうか!
 次回から、
 『スサノオ そりゃないぜ、ネエちゃん?!』
 『アマテラス いっそ隠れてしまいたい・・』
 『オモヒカネ 騒げや唄え大作戦!』
 の三本です。 又、次回も(お盆に入りますが)見てくださいね。ジャンケンポン(盆)!」

紙芝居:「わらしべ長者」 後編

 「・・歩こうー、歩こう~、わたし脳天気~。交換大好き~、ドンドンゆこう~・・。」と歌いながら、この〔物に執着しない〕脳天気な若者は、〔馬〕を引いてドンドン歩いていると、やがて大きな屋敷の前に出た。
 すると中から、そこの屋敷の主人が出てきた。
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 そして・・、
「わしは今から、都へ引越しをするのだが、荷物を引っ張る〔馬〕が足らんのだ。・・お前さんのその丈夫そうな〔馬〕を、わしに譲ってくれないか?」と言った。
 「ああ、良いですよ。・・元々、この馬は仏様からの頂き物です。・・人のお役に立てるなら、どうぞ遠慮なく連れて行ってください。」と、若者は二つ返事で答えた。
 その言葉を聞いて、屋敷の主人は、そのバカ者、いや若者を大層気に入って、「お前さんは、正直そうな良い人相をしておる。・・そうじゃ、その〔馬〕のお礼に、わしのこの〔屋敷〕と〔田んぼ〕を譲ろう。・・いや、遠慮するな。どうせ、わしはもう二度とここには帰ってはこないと思うのでな・・。ハッハッハッ」と言って笑った。
 「えっ、本当ですか?!ラッキー!!」と、若者は飛び上がって喜んだ。
 こうして、一本の〔わらしべ〕は、〔みかん〕に変わり、〔反物〕に変わり、〔馬〕に変わり、今、〔屋敷〕へと変わった!
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 この話を聞いた村の人々は、この若者を『わらしべ長者』と呼んで、たいそう噂しあったという事じゃ。 めでたし、めでたし。 おしまい

 〔余話として〕
 この『昔ばなし』は、どこかおかしい・・。つまり変だ。・・仏さまの〔いいつけ〕を守ってない。
 ・・それは、仏様が、夢の中で告げられた『お前が目覚めて、一番最初に手に掴んだ物が、お前の《幸福》じゃ。大切にせよ!』と、言われたにも関わらず、いとも簡単にこのメッセージを無視して、この若者はこの〔わらしべ〕を欲しがっていた子供にやってしまった事にある。
 若者は〔仏様からの大事な贈り物〕を、〔目の前に、それを必要とした者の為に、〕いとも簡単に放棄したのだ。
 これは、現代人にはなかなか出来ない事だと思う。
 僕なら、こんな夢を見たら、《仏壇》にその一本の『わらしべ』をお供えして、「どうかー、幸せをもたらして下さいませー。ナンマンダブ、ナンマンダブ・・。一生手放さんぞー!」と、言ったかもしれん。・・・結果的に、幸せが遠のく。・・〔わらしべ〕はただの〔わらしべ〕として、終ったかもしれん。
 大事なことは、仏さまからの大事な(スピリチャルな)メッセージであろうと、《目の前に困っている人》がいるなら、そんなメッセージは《無視》して、自分でその時、何をすべきかを考えて、行動すべきだと思うのだ。
 ひょっとすると、それが本当に仏さまが望んでおられる事かもしれないから・・。
 そんな事を考えてると、この『わらしべ長者』は深い。
 僕のこの『紙芝居』の裏メニューに、(一本のわらしべを絶対に手放さなかった)『わらしべ凡者』という物があるのだが、それは又、別のおはなし・・。
 

紙芝居:「わらしべ長者」 中編

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 若者が〔みかん〕を持って歩いていると、道端で休んでいた呉服屋が、声を掛けてきた。
「あー、すまんがのぉー。荷物が重くて喉がカラカラなんじゃ。・・どこかこの辺に、飲み水は湧いとらんかのぉー。」
 若者はそれを聞いて、「う~む、この辺りに井戸は無し。・・あっ、そうじゃ。呉服屋さん、私のこの〔みかん〕をどうぞ。」と言った。
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 「あーうまかった!お蔭で生き返ったよ。・・旅の途中でたいしたお礼はできないが、これは〔みかん〕のお礼じゃ。」と言って、呉服屋は、三反の〔反物〕を差し出した。
 「ありゃ~、一本の〔わらしべ〕が〔みかん〕に変わり、今、〔反物〕に変わってしもうた!・・これも仏様のご利益じゃろうのう」と、若者は又、ずんずん歩き出した。
 すると・・、
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 今度は、横たわる馬の側で、困った顔をしているお侍に出会った。
 「どうされましたか?」と、若者が尋ねると、お侍は、
「いや~、わしの〔馬〕が急に倒れて、今にも死にそうなんじゃ。それで困った事になった、どうしようかと、思案しとったんじゃ」と言った。
 「それなら、私がこの〔馬〕を頂きましょう。・・変わりにこの〔反物〕を差し上げましょう。」と、若者が言うと、お侍は喜んで交換してくれた。
 そして、若者はその〔馬〕に、水をやり体をさすり、一生懸命看護した。
・・すると、
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 突然、「ヒヒヒーン!」と、馬は元気に立ち上がった。
 「ああっ仏さま、ありがとうございます!」と若者は喜んだ。
 そして馬にエサを与えてみると、見るからにこの〔馬〕は頑丈そうな体つきをしていた。
 「あちゃー、一本の〔わらしべ〕が〔みかん〕に変わり、〔反物〕に変わり、今、立派な〔馬〕に変わってしもうたー!仏さま、本当にありがとうございます!」と、若者は目をクルクル回して驚き、又ズンズン歩き出した。 つづく

紙芝居:「わらしべ長者」 前編

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 (プロローグからの続き~) 
 その晩、若者は仏様の夢を見た。
〔仏様〕「お前はたいそう働きものじゃ。願い通り、幸福を授けてやろう。
 明日の朝、最初に手にした物が、お前の《幸福》じゃ。
 よいな、最初に手にした物じゃぞ!」と、仏様は夢の中でおっしゃられた。
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 次の日、若者は「なんとも不思議な夢を見たなぁ・・」と、大きなノビをして外へ出たとたん、ツルリッと足を滑らせ、ドッスン!
 「ありゃ、最初に手にした物は、・・この《わらしべ》一本か?! これが《幸福》とは、なんとも心細いなぁ~。
 でも、仏様から頂いた物だ。大事にしよう」と・・、
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 町に向かって歩いて行くと、顔の回りをブンブンと、アブが一匹飛び回った。
 「シッシッ!うるさい奴め、こうしてやる!」
 と、若者はそのアブを捕まえて、持っていた《わらしべ》に結びつけてしまった。
 (・・そう、この《わらしべ》は、仏様からの大事な贈り物である事を、すでにこの(とらわれの気持ちのない)パッパラな若者は忘れておったんじゃ。しかしそれが良かったんじゃな。仏様は「わしの授けた《幸福のわらしべ》に、なんとっアブを結び付けるとは!・・もったいない事をしよって!この罰当りめ!」とは怒らず、微笑んで見ておられたんじゃな。)
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 そして又、ズンズン、ズンズン歩いて行くと、一台の立派な〔牛車〕が、向こうからやって来て、この若者の前で止まった。
 そして、その牛車から一人の子供が窓から顔を覗き出し、その家来が、若者の所にやって来た。
 けらいは、「あの~、すみませんが、あなたの持っておられるその《アブ付きわらしべ》を譲っていただけませんか? うちの若殿がほしがっておられまして・・」と言ってきた。
 若者は(「これは仏様からの大事な頂き物ですから、絶対ダメです!」とは言わず、)
 「お望みとあらばどうぞ」と言って、アブを差し出した。
 けらいは喜んで「これはお礼です。」と言って、《みかん》を三つくれた。
「わずかな間に、一本の《わらしべ》が、《みかん》三つになった。これはきっと仏様の御利益だな」と、この脳天気な若者はそう勝手に解釈して、このみかんを食べようと歩いていると・・・。 つづく
 

紙芝居:「わらしべ長者」 プロローグ

・・昔むか~し、わしがまだ子供だった頃の事じゃ。
 近くの公園で、毎年夏休みになると、「チビッ子映画鑑賞会」という催しがあったんじゃ。
 わしはそれが大好きでなぁ、毎年、必ず見に行っておった。
 そして映画が終ったら、ピーチーエーのおじさん達が、子供たちに、ビニール袋一杯のお菓子の詰め合わせをくれるんじゃ。
 そこには、安物のガムやめがね型のマーブルチョコや甘酸っぱいスルメなどが入っておってな、それは得した気分になったもんじゃ。
 ・・或る年のことじゃ。わしは例年のように、その「映画鑑賞会」に行った。そこで、わしは「わらしべ長者」という〔人形劇映画〕を見たんじゃ。
 それを見てわしは驚いた!こんな楽しくて奇想天外な話は、今まで見たことがなかったからのぉ。・・その時の主人公の声の調子など、今でもはっきり覚えておる。
 それから、すっかり、わしはこのお話の《とりこ》になった。
 この話のモデルが奈良の長谷寺を舞台とした『今昔物語』にあったという事をしったのは、それからずっと後のことじゃ。
 それを知ったわしは、この長谷寺に実際お参りに行って、そこで密かに〔ご本尊〕の観音様前で『昼寝』をして、起きて最初に掴んだモノを持って帰ってやろうと企んだんじゃが、残念ながら、本堂の中には入れんかった。又、いつかリベンジしてやろうと思っておるんじゃが・・。いかん、いかん、欲じゃ欲じゃ!それは又、別の欲の話じゃ。
 (話を戻さねば、)・・それから何十年も経った今、わしはあの時の記憶をもう一度甦らせたくなり、たまらんようになって、この紙芝居を作った。
 いわば、このお話はわしの子供の頃に知った〔昔ばなし〕の原点なんじゃな。
 皆の衆も、懐かしく聞いてくれたら幸いじゃ・・。
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 昔むかーし、たいそう信心深い若者がおった。
 この若者、働いても働いても、いっこうに暮らしが楽にならんかった。
 そこで或る日、あるお寺のお堂に籠って『願かけ』をしたんじゃ。
「仏さま、どうか少しだけ、私に幸福を授けて下さい!」と。
 つづく

紙芝居:「ある抗議書」 その7 〔最終回〕

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「閣下、
 私は今ここで、〔宗教〕の善し悪しを言うつもりはありません。
 又、そのような資格もございません。
 そして、処刑される人間が死ぬ前に、自分の犯した罪を深く反省する事も良いことだとは思います。
 ・・が、しかし、それで死後〔天国〕に行けたとしたら・・。
 いや、本当に〔天国〕が、あるのか無いのかはわかりませんが・・。
 犯人が、「必ず、〔天国〕へ行くのだ」と言って、心安らかに死を迎えたことを、突然不慮に家族を亡くして、悲しみにくれる我々が聞いたとしたらどうでしょうか・・?」
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「閣下、
 私がこの手紙で言いたかったのは、〔地獄〕へ行かねばならぬような者が、〔天国〕へ行けるという教えを、《刑務所》の中で、聞くことが出来るというのは、おかしいと言う事です!
 そして、この《書物》の発表が、我々遺族の悲しみを、増幅させる事を想像できなかったという《無神経》さに、憤るのです。」
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「司法大臣閣下、
 今一度、死に際の母の言葉を書き足し、この手紙を終りたいと思います。
 『あんな極悪な人間は、この世で捕まらんでも、死んだら〔地獄〕に落ちるんじゃ。 〔地獄〕でひどい目に合うんじゃ・・。』
 犯人〔坂下鶴吉〕は、母の考えとは違って、この世で捕まり、改心した為、死後は〔天国〕へ行ったことになっています。
 私は、母の愚かな期待を思い出す度に、涙を抑えることができないのです。」  おしまい

 〔~この『紙芝居』を作った動機~製作秘話〕
 『先生、極悪人であっても、お念仏ひとつで〔極楽浄土〕へ往けるのですよね!・・で、あるなら、今、獄中にある○○教の教祖も、〔念仏〕を称えれば、死後〔極楽〕に往けるのですか?』
 又、『秋葉原の無差別殺人犯も、小学生を襲った犯人も、〔念仏〕を称えて懺悔すれば、〔極楽浄土〕へお参りできるのですか?』
 ・・以上の同じような質問を、ある〔研修会〕で二~三度ほど聞いた。
 その答えは(講師の先生によると)こうだった。

「仏さまのお慈悲から考えるなら、極悪人であっても〔お念仏〕を称え、(心から懺悔するなら、)〔極楽浄土〕へ往けるのでしょう。・・が、はたして、それらの犯人たちが、心から懺悔し、仏さまを信じお念仏するかは疑問です。」と。
 僕は、この答えを聞いて納得できなかった。
 もし、これらの犯人が、獄中〔お念仏〕を称えたとしたら・・。
 そして、この答えを、もしこれらの事件の『被害者家族』が聞いたとしたら、はたして納得できるだろうか・・?
 この講師先生は、それでも凛とした口調で、同じように被害者家族に、このように言えるだろうか?(ここは、〔宗教者として〕非常に大事なトコだと思う!)
 ・・最近、講師の先生等が口を開けば、「お念仏、ひとつで救われるのですよ!・・お念仏しましょうね!・・有難いですね!」とよく言われる。
 又、「親鸞聖人が、『お念仏を称えれば、悪人でも救われる』と言われましたが、『悪』の意味が違うのですよ。・・お聖人の『悪』とは、人間だれでも持つ根本的な悪の事であって、殺人犯とは違うのですよ。」とも聞く。
 この答えも、僕は疑問だ。
 親鸞聖人の『悪』というお言葉には、殺人犯も含まれていると僕は思っている。・・だからこそ、鎌倉武士たちも入信したんじゃないか!
 『お念仏』一つの味わいは、それこそ、一人ひとりが『命掛け』でなければならないと、僕は思っている。
・・でなければ、被害者家族に対して、お念仏の有難さを、堂々と説くことが出来ないではないか。
 ・・実は、このように偉そうにいう自分自身も、まだ自信がないのだ。
 だから、この『紙芝居』を作って、なんとか自分の考えを少しでも、まとめようとしたのかもしれない。

 ・・あとがきが長くなって、まとまりがつかなくなって来た。
 この『ある抗議書』を紙芝居にしようとした動機は、先の『ある質問』を聞いてから、ずっと温めてきたものなのであるが、なかなか完成しなかった。・・が、今ようやくここに発表でき良かったと思っている。
 実は、妻からこんな『紙芝居』を作っても、どこで発表するの?と、怒られていたのである。(一つ間違えれば、僕のもっとも嫌う、他宗教の教義批判になってしまうからだ。・・また、自身の宗教批判にもなり兼ねないとも思った。)
 それでも、作らざるを得ん不思議な力に動かされ、作ってしまった。

 さて、この実際の事件を元にして書かれた、菊池寛氏の『ある抗議書』の「紙芝居化」は、省略したり、表現を変えたりした部分が、ひじょうに多い。
 願わくば、『原作』を読まれる事を切にお勧めする。(インターネットで探せば、全文読めます。) 本当におしまい。
 
 

紙芝居:「ある抗議書」 その6

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「・・それは、犯人〔坂下鶴吉〕が処刑されてから、一年近く経った頃のことです。
 私は或る日、新聞広告で『坂下鶴吉の告白』という本が、彼の弁護士によって、出版されたことを知りました。
 私は不快ながら、その本を手に入れ読みました。
 読み始めるにつれ、私は忘れようとしていたあの〔憎悪〕の気持ちが、再び、甦ってくるのを止める事が出来ませんでした。
 又、《国家刑罰》のあり方に対しても、疑問を持たざるを得ませんでした。」
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「閣下、
 この『告白』の書によりますと、九人の命を奪った犯人〔坂下〕は、『自分は《天国》へ行く』と、喜んで死んでいったのです。
 〔坂下〕は、死刑を宣告されてから、獄中で《天国の教え》を説く宗教に〔入信〕したそうです。
 この宗教の《神》を信じ、懺悔すれば、これまでの〔罪〕は許され、死後、天国へ行けるとという教えを〔坂下〕は聞き、監獄の中で、それを信じ、あやつは「心安らかに、自分は天国へ旅立つ」と言って、処刑されたそうです。
 閣下・・、
 私を心の狭い人間だとお思いでしょうが、私は、犯人〔坂下〕に、自分の犯した罪の深さにおののき、苦しみ涙しながら、死んで往ってもらいたかったのです。
 姉夫婦の〔死に際の恐怖〕の、せめて千分の一でも、感じてもらいながら・・。」 つづく

紙芝居:「ある抗議書」 その5

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 「・・ところが、時節到来と申しましょうか、ついに、大正五年十月に犯人は捕まったのです。
 犯人の名は《坂下鶴吉》といい、やはり、殺人の動機は金銭目的でした。
 この凶悪な男は、その後も犯行を繰り返し、全部で九人もの尊い人の命を奪ったのだそうです。
 閣下、
 私は裁判所で初めて、この姉夫婦の命を奪った男の顔を見ました。
 骨太で低い鼻、血走った眼、獰猛な獣のような感じでした。
 ・・が、裁判長が『死刑』を宣告すると、そのような男でも、サッと顔色を変えて、頭を低くうな垂れたのでした。
 私の感情からすると、死刑でもまだ足りないぐらいの気持ちでしたが、犯人のこの時の顔色を見て、少しは心が安らいだのです。」
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 「やがて、犯人《坂下鶴吉》が〔処刑〕された事を新聞で知りました。
 姉夫婦の殺された時の恐怖を考えますと、処刑の事実を聞いても、まだ満足できませんでしたが、今の『刑法』では仕方がありません・・。
 この時、私の心を長い間苦しめてきた憎悪の気持ちが、今ようやく晴れたかのように思え、私は現在の『司法制度』に、ある感謝の気持ちさえ持ったのです。
・・・が、しかし閣下、
 これで、この事件が終っていたとしたら、何もこのような長い手紙を、閣下に送る必要はなかったのです。」 つづく 

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