・・昔むか~し、わしがまだ子供だった頃の事じゃ。
近くの公園で、毎年夏休みになると、「チビッ子映画鑑賞会」という催しがあったんじゃ。
わしはそれが大好きでなぁ、毎年、必ず見に行っておった。
そして映画が終ったら、ピーチーエーのおじさん達が、子供たちに、ビニール袋一杯のお菓子の詰め合わせをくれるんじゃ。
そこには、安物のガムやめがね型のマーブルチョコや甘酸っぱいスルメなどが入っておってな、それは得した気分になったもんじゃ。
・・或る年のことじゃ。わしは例年のように、その「映画鑑賞会」に行った。そこで、わしは「わらしべ長者」という〔人形劇映画〕を見たんじゃ。
それを見てわしは驚いた!こんな楽しくて奇想天外な話は、今まで見たことがなかったからのぉ。・・その時の主人公の声の調子など、今でもはっきり覚えておる。
それから、すっかり、わしはこのお話の《とりこ》になった。
この話のモデルが奈良の長谷寺を舞台とした『今昔物語』にあったという事をしったのは、それからずっと後のことじゃ。
それを知ったわしは、この長谷寺に実際お参りに行って、そこで密かに〔ご本尊〕の観音様前で『昼寝』をして、起きて最初に掴んだモノを持って帰ってやろうと企んだんじゃが、残念ながら、本堂の中には入れんかった。又、いつかリベンジしてやろうと思っておるんじゃが・・。いかん、いかん、欲じゃ欲じゃ!それは又、別の欲の話じゃ。
(話を戻さねば、)・・それから何十年も経った今、わしはあの時の記憶をもう一度甦らせたくなり、たまらんようになって、この紙芝居を作った。
いわば、このお話はわしの子供の頃に知った〔昔ばなし〕の原点なんじゃな。
皆の衆も、懐かしく聞いてくれたら幸いじゃ・・。
昔むかーし、たいそう信心深い若者がおった。
この若者、働いても働いても、いっこうに暮らしが楽にならんかった。
そこで或る日、あるお寺のお堂に籠って『願かけ』をしたんじゃ。
「仏さま、どうか少しだけ、私に幸福を授けて下さい!」と。
つづく
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