殿様は思いました..
「そうじゃ・・。昨年、作材の村人の大半が税を払えず、一夜にして、大船で夜逃げをした。
それを[逃散(ちょうさん)]と呼び、藩上げての大騒動になり探査したが、ついに村人は一人として見つからなかった。
どうやら風のうわさでは、村人たちは北九州の方面へ逃げたのでは⁈・・と聞いたが、今もどこへ行ったか、わからないままじゃ・・。
作材の村人は、今もこの『岸和田』の土地に愛着があるにちがいない⁈『作材に帰りたい、作材に帰りたい!』と故郷を思っているにちがいない⁈
しかし帰ってきたら、罰せられる。・・そんな望郷の複雑な念が、この作材の『石』に乗りうつっているかもしれん・・。城に居ればさぞや窮屈であろう。
そうじゃ、きっとそうじゃ。・・この石は、やはり元の『作材』村に返してやろう。」
そして次の日、この夜泣き石は、庭から掘り出され、又『作材』村に帰ることになりました。
「そーりゃ、そーりゃ」と、村人たちもうれしそうです。
「なんか、やけに軽いのおー、行きはあんなに重かったのに!」と。
そして、この石は元の川の石橋に戻りました。つづく
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紙芝居:『夜泣き石』(その4)
紙芝居:『夜泣き石』(その3)
やがて、『作材(ざくざい・ざくざえ)の石』はお城に到着し、庭師によって殿様の部屋の横に置かれました。
その夜のこと・・。
『しくしく、しくしく・・』
殿様が眠っていると、庭から誰かの鳴き声が聞こえてきました。
「いったい誰の泣き声だろうか⁈」と殿様は思いました。
やがて、その泣き声はだんだんと大きくなっていきます。
たまらず、殿様は寝床から起き上がり、ふすまを開けると・・、
なんと、昼間運んだ『作材の石』が、おいおい泣いているのです。
やがて石は、『作材(ざくざえ)のうー!、作材いのうー!=(作材に帰りたい)』と言いながら、大声で泣き始めました。
その声を聞きて驚くとともに、殿様は「あっ!」と一つの事件を思い出しました。
それは、一年前に[作材]村で起こった、『逃散(ちょうさん)』と呼ばれた、税が払えず、一夜にして村ごと夜逃げした大事件でした。 つづく