又、或る日の事・・。
聖覚さまの所へ、一人の気落ちした中年武将がやって来ました。
彼の名は、熊谷直実(くまがいなおざね)といいました。
(熊谷)「聖覚様、私はほとほと武士が嫌になりました。先の平家との戦[一ノ谷の合戦]で、打ち取った侍の首が、私の息子と同じぐらいの年齢だったです。
私は戦が嫌になりました。・・世の無常を覚えました。
どうか、こんな私をお救いください。私はどうすれば救われるでしょうか?」と。直実は聖覚さまに訴えたのです。
(聖覚)「あなたを救えるのは、私ではありません。阿弥陀さまです。・・その教えを説いていらっしゃるのは、法然上人です。さぁ、法然上人のお寺に参りましょう。」と、聖覚様はこの武将を法然上人の元につれていったのです。(あくまでも、聖覚法印は自分の弟子にするのではなく、法然上人を頼られました。・・このこと一つにおいても、いかに聖覚法印が法然上人を信頼していたがわかります。)
こうして、熊谷直実は、法然上人の弟子になりました。
法名は[法力房連生]。のち立派なお坊様になられたという事です。つづく