住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:『幸福の王子』 〔前編〕

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 〔つばめ〕は、暖かい国に行く途中でした。
 「今日はここで泊まるとしよう・・」と、〔つばめ〕は〔王子〕の両足の間に静かにおりて、翼を休めました。
 するとポツーリ、ポツリと水滴が落ちてきました。
 「あれ、雨かな?」と〔つばめ〕が上を見ると、なんとそれは〔王子〕の目から溢れ出た涙だったのです。
 「あなたはいったい誰ですか?」と〔つばめ〕が聞くと、「私は『幸福の王子』だよ」と答えが返ってきました。
 「幸福の王子ですって!?・・それなら、どうしてそんなに泣くのですか?」と〔つばめ〕が不思議そうに聞くと、〔王子〕はこんな話を始めました。
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「私はまだ生きていた頃、《涙》とはどういうものか知らなかった。宮殿に暮らしていた頃は、毎日が楽しく踊って暮らしていたのだ。宮殿の周りは高い塀がめぐらされ、外の世界がどうなっているのか考えて見たこともなかった。
 それ程私のまわりは美しいものばかりだった。(おシャカ様の青春時代と一緒や・・)
 確かに私は幸福に暮らし、幸福に死んだ。
 ところが、町の人々が、そんな私をこんな高い所へ立てたのだ。
 その為、私は町中の悲しみが、何もかも見えるようになってしまったのだ。こうなってはいくら私の心臓が鉛であっても泣かずにはいられないじゃないか・・」
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「つばめよ、つばめ。小さなつばめ。あの家を見てごらん。子供が病気だというのに、薬を買うお金もないのだ。・・どうか使いを頼まれてはくれないか?私の剣から〔ルビー〕を取ってあの家に持って行っておくれ」と〔王子〕は言いました。
 その〔王子〕の優しい気持ちに〔つばめ〕の心は打たれました。
 そこで〔つばめ〕は〔ルビー〕を咥えると、看病に疲れ、うとうとしている母親のそばにそっと〔ルビー〕を置いたのでした。
 目が覚めたら、どんなに母親は驚くでしょう。
 そう考えたら〔つばめ〕の体はポカポカ暖かくなってきました。
「〔王子〕さま、不思議です。どうしてこんなに寒い夜なのに体が暖かくなるのでしょうか?」と言うと、
〔王子〕は「それは君が良い事をしたからだよ」と答えました。
 つづく・・。
 
 


 
 
 

紙芝居:『幸福の王子』 〔プロローグ〕 オスカー・ワイルド原作

 この物語を初めて読んだのは、いったいいつ頃だったろうか・・?
 おそらく小学校の〔国語の教科書〕が最初だったような気がする・・。
 大人になった今、読み返してもこの物語は素晴らしい。
 僕はこの物語が大好きだ!(だから紙芝居にした!)

 ・・お城の〔外の世界〕を知らなかった王子が、知った事によって何かに取りつかれた様に自己を犠牲にしながら、人助けを始める。
 不本意ながら、それに巻き込まれていく内に、自分も王子と同じようになってしまう(・・が、後悔しない)一羽の〔つばめ〕・・。
 このお話の主人公の〔王子〕と、〔おシャカ様〕がダブってしまうのは僕だけだろうか・・?
 そしてこの〔つばめ〕って一体・・誰?
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 昔、北の国のある町に、王子の銅像が高い円柱に立っていました。
 その銅像は、体中〔金箔〕で覆われ、目には青い宝石〔サファイヤ〕、剣のつかには真っ赤な宝石〔ルビー〕が飾られ、三つとも美しく輝いていました。
 町の人々は、「本当に美しい! それに生きていた頃の〔王子様〕そっくりだ。いつも明るく《幸福》に暮らしておられたのだろうね」と言い合い、みんなこの銅像を『幸福の王子』と呼んで、自慢に思っていました。

 或る秋の終わり頃・・、そこに一羽の〔つばめ〕がやってきました。 つづく・・・

紙芝居:『あわてもののうさぎ』 (後編)

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 動物たちは、今や理由もわからずパニックとなり、ただただ海に向かって暴走していた。
 そんな動物たちの姿を見ていた〔ライオン〕の王様が、けらいのサルに聞いた。
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「いったい、何が起こったのだ!」
 するとサルは「はい、王様。大地が裂けているそうです。・・それで皆、逃げ出しているのです」と答えた。
 ライオンは「何だと、大地が裂ける?・・とはいえ、あのまま進めば皆、崖から荒海に落ちて死んでしまうぞ・・。これは止めねば!」と言って、急いで動物たちの後を追いかけた。
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「おーい、待て待て!みんな慌てるな!このまま進めば、皆崖から落ちて死んでしまうぞ!」とライオンはみんなを止めた。
「でっでも王様、大地が裂け始めているのです。急がねば!」とトラが言うと、ライオンは・・、
「では聞こう。この中の誰なんじゃ?大地が裂けているのを見たというものは?」と問うと、トラは・・、
「はっはい、それは確かウシ君が・・見たとか。なぁそうだろう、ウシ君?」と言うと、
ウシは「いいえ、私はシカ君に、そう聞いたので」と答えた。
 そしてシカは、それをうさぎ達に聞いたと答えた。
 ライオンは「では聞こう。お前たちうさぎの中で、大地が裂けるのを見たものはおるか?」と言うと・・、
「はい、」と一匹のうさぎが返事をした。
そして、ピョンと前に出てきて「王様、私が『ドッカーン!』という大地が裂ける音を、この耳で聞いたのでございます」と答えた。
 ライオンは「では、その場所に案内しておくれ」と言い、うさぎを先頭に動物たちは皆ゾロゾロとついて行った。
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「確かこの辺でございます」とうさぎは、元居た場所に着いた。
 ライオンは「それにしても、地割れの後が無いぞ」とライオンは辺りを見回し、・・そして突然笑い出した。
「ワッハハハッ!うさぎが聞いたのはコレが落ちた音だったのだろう」と、大きな〔ヤシの実〕をライオンは指差した。
そしてライオンはみんなに言った。
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「みんな、良く聞きなさい。うさぎが聞いたのは、この〔ヤシの実〕が落ちた音だったのだ。皆、訳もわからぬ事に慌てて、心を動かすようではダメだ。正しく見聞きして話さなければダメだ。もう少しで皆は、荒海に落ちて命を失うところだったのだぞ。どんな事があっても、心をグラつかせないような訓練をせねばいけないな!」と話した。
 あわてもののうさぎも恥ずかしそうに、それを小さくなって聞いていた・・・。

 実はこれ、〔おシャカ様〕の前世が《ライオンの王》であった時のお話なのだそうです。 おしまい
 

紙芝居:『あわてもののうさぎ』 (前編)

『早とちり』=(せっかちに判断して間違えること)『広辞苑』より
・・我々は(いや、私は)『早とちり』をよくやる。
 それが小さい支障で済めば良いが、大きければ(かつてのオイルショックによる『トイレット・ペーパー』売り切れ騒動のように)、とんでもない大騒動になってしまう・・。
 これは、その危険性を2500年前におシャカ様が警鐘を鳴らしたお経(ジャータカ)によるお話である。
 『あわてもののうさぎ』(仏教もの13)
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 昔、臆病者のうさぎが一匹いた。
 そのうさぎは考えた。
「もし、この地面が割れて世界が壊れたら、どこに逃げれば良いだろうか?」と。
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その時、近くの森で『ドッスーン!』と何かが音をたてて落ちた。
 うさぎはあわてて、「たっ大変だーっ!地面が割れたーっ。世界が壊れるーっ!」と叫びながら逃げ出した。
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 周りに仲間のうさぎがいた。
「どうしたんだい、そんなにあわてて」と一匹のうさぎが尋ねた。
「大変なんだよ。地面が割れて世界が壊れるんだ!」とあわてもののうさぎが答えると、「何だって!それは本当か!」とみんなビックリ。半信半疑ながらも(ここがポイントやね・・)、みんな走り出していた。
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 その近くの草原に鹿がいた。
 うさぎ達が走っているのを見てその理由を聞いた。
「それは大変!」と理由を聞いた鹿達も気がつけば(ここもポイントやね・・)一緒に走り出した。
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 うさぎと鹿が必死になって走っている姿を見た、牛、トラ、サイ、ネズミ、その他大勢の動物達は「何があったんだろう?あんなにあわてて・・」と隣のトラに聞くと、「ワシは何も知らんが・・、でっでもこれは大変な事に違いないぞ!」とみんな一斉に走り出した。
「みんな逃げろー、逃げろー!大地が割れるぞー!」と誰彼ともなく叫び出し、今や大パニックとなってしまった。
 大変なことに動物たちのゆく手は断崖絶壁。その向こうは荒海であった。
(さぁ、この先の動物たちの運命やいかに!?べべんべん(扇子の音) 〔後編〕へつづく・・)

 

紙芝居:『本当の香り』 ~ニーチの話~〔後編〕

 いつも『紙芝居』の主人公の顔はどんな風にしようかと色々と悩む・・。
今回のこのお話の主人公〔ニーチ〕は、《ミスター・スポック》と《ウッチャン・ナンチャン》の〔ナンチャン〕の顔を合体させて作らせて頂いた。〔笑〕
ただのインスピレーションで決めたのであって何の根拠もありません。・・以上、余談。・・では続きをお楽しみ下さい。

 『本当の香り』〔後編〕
 ある日、〔ニーチ〕の町に〔お釈迦さま〕一行がやって来られました。
 人々は皆そろって〔お釈迦さま〕のお話を聴きに行きました。
 実は〔ニーチ〕も行きたかったのですが、「僕の臭いがきっと皆の邪魔になる」と思って行きませんでした。
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そんなある日の事、〔ニーチ〕が《肥》を担いで町の路地を歩いていると、向こうから《托鉢》の一行がやって来ました。
 その中のお一人が〔お釈迦さま〕である事はすぐに分りました。
「何という尊いお姿なんだろう・・」と〔ニーチ〕は心を打たれましたが、我に返って急いで横道へ折れました。
 お顔を拝めた喜びをかみ締めながら歩いていると、又前方から〔お釈迦さま〕一行が歩いて来られます。
〔ニーチ〕は又急いで道を折れました。・・が、この日は避けても避けても、何度も出逢ってしまうのでした。(こんな事ってたまにあるよなぁ・・)
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慌てた〔ニーチ〕は、何度目かの出逢いの時、誤ってころんでしまい、《肥》を道にこぼしてしまいました。
 〔お釈迦さま〕一行は、すぐ目の前まで来られています。
「ああ・・、大変だー!どうしよう・・。お釈迦さまの通られる道が汚れてしまった!」
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その時、困り果ててる〔ニーチ〕に、〔お釈迦さま〕は近づき、その肩にそっと手を置いて言われました。
 「避けることはないのだよ、〔ニーチ〕。君のことは皆から聞いて知っているよ。
 君は私たちと同じ《衣》を着ているではないか。人の嫌う仕事にいそしむ心。それが君の《本当の香り》なのだよ」と・・。
 〔ニーチ〕は喜びに震える手を合わせると、〔お釈迦さま〕のお姿に、野原で出逢った老人が重なって見えたのでした。・・おしまい。

『生まれによって〔賤しい者〕になるのでもなく、〔バラモン(当時のいっちゃん上の階級)〕になるのでもない。《行為》によって〔賤しい者〕にも〔バラモン〕にもなるのである』《法句経》より
 
 

 

紙芝居:『本当の香り』 ~ニーチの話~〔前編〕

『本当の香り』~ニーチの話~ 「大荘厳経論」より
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昔むかし、インドの国に〔ニーチ〕という《お便所の汲み取り》を仕事とする若者がおりました。
 〔ニーチ〕はまじめな青年で、毎日一生懸命に働いておりました。
 それで、身に着けている布ばかりでなく、身体にまで臭いが染み付いており、仕事中はもちろん、そうでない時でも人々は〔ニーチ〕を避けて通りました。
 〔ニーチ〕は寂しく思いました。友達が欲しいと思いました。
「そうだ!臭いの染み込んでない服を作れば良いんだ!」と・・、
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〔ニーチ〕は、こまめに集めた〔布きれ〕を綴り合わせて服を作りました。
「これで友達ができるかもしれないぞ」と、ひそかに胸を躍らせて町に向かいました。
 ・・が、人々は〔ニーチ〕を見ただけで、顔をしかめました。
 いつも程、臭いがしない事に誰も気がつきません。
 誰もが『ニーチは臭いに決まってる』と思い込んでいるようでした。
 〔ニーチ〕はいっそう寂しくなりました。
「僕が臭いのは誰のせいだ!誰のお蔭でみんなお便所で〔用〕を足せるんだ!」と・・、
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〔ニーチ〕は、いつも《肥》を捨てに行く町はずれの広い原っぱを大声で喚きながら走りました。
 それから、草原に《大》の字になって空を見つめました。
 すると、どこからか声がしました。
「どうしたんだい、今日は機嫌が悪そうだね・・」
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〔ニーチ〕はびっくりして起き上がりました。
 そこには、杖をついて痩せた老人が立っていました。この老人はどうやら、目が悪そうでした。
 「ワシは、ここでずっと鳥や動物達と同じように暮らしている。
お前さんはいつもここに、重い《肥》を捨てに来てるんだろう。・・ご苦労な仕事だ。ワシはお前さんが羨ましい」
 それを聞いて〔ニーチ〕はびっくりし、「お爺さん、どうして僕の仕事が羨ましいのですか?」と聞くと・・、
「それは、お前さんが《人の役に立つ仕事》をしているからだよ」
〔ニーチ〕は驚き、『僕の事を、そんな風に見てくれている人がいたんだ・・』と、それだけで彼の心はすっかり晴れました。
 この老人、「今日はいつものような臭いがしないねぇ・・。どうかしたのかい?」と続けて尋ねました。
〔ニーチ〕は「いいえ、別に・・。はい、とても良い事があったんです。お爺さん、有難う!」とお礼を言って別れました。
 
 それから〔ニーチ〕は、又、仕事に精を出しました。
 すれ違う人が顔を背けても、ちっとも気にならなくなりました。
 そんなある日、この町に〔お釈迦さま〕一行がやって来られました。 
 〔後半〕へ続く・・

紙芝居:『夫婦善哉』 その四

『人間は皆、それぞれ欠けた弱い所を持っているものです。
夫婦というものは、その欠けた弱い所を、お互いに助け合い補いあってゆくものです。こちらが、苦しく悲しい思いをしている時は、相手も同じように苦しみ悲しんでいるに違いありません。 《山本周五郎原作 「青嵐」より》』
 ・・以上、余話。
 それでは最終回のはじまり~。
 
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やがて〔柳吉〕は退院し、芸者に戻っていた〔蝶子〕は、友達からお金を借りて《カフェ(今の『洋風酒場』)》を開いた。
 名は相変わらず、「蝶柳」の上にサロンをつけ、『サロン蝶柳』とした。
 お店には《蓄音機》をかけて、《女給(今のホステス)》をそろえ、日本料理なども出し、たちまちこの店は「有名店」となった。
 〔蝶子〕もそこで《マダム》と呼ばれるようになった・・。
 そんなある日、店に〔柳吉〕の娘が、父の危篤を知らせに来た。
 驚いた二人は、すぐに実家に行こうとした。
 ・・が、〔柳吉〕は〔蝶子〕に、「おっお前は家におり。今一緒に行ったら都合が悪い!」と言った。
 その言葉に気抜けした〔蝶子〕は、「お父さんの息のある内に、ワテ等二人のことを、ちゃんと認めてもらうように頼んで下さいよ!」とだけ言った。
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しかし、吉報は来ず、ようやく〔柳吉〕から電話があったと思うと、「おっおっおばはんか、今、おやじは死んだ。おっおっお前は葬式には来ん方がええ。相変わらず、養子が・・・」と、ここまでしか〔蝶子〕には聞こえなかった。
「なんでや?葬式にも行ったらあかんて、そんな話があるかいな!」と頭の中に火が走り、気がついたら、店の二階にガス管を引っ張り込み、自殺しようとしていた。
 ・・が、間一髪、紋付を取りに来た〔柳吉〕が発見!
 大騒動にはなったが、命は助かった。しかし、そのことが新聞に書かれ、〔柳吉〕は居ても立ってもおられず蒸発してしまった。
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やがて一ヶ月が経ち・・、心配で堪らぬ〔蝶子〕の元に、〔柳吉〕がひょっこり現れた。
 「ゆっゆくえを暗ませたのは、さっ作戦や。養子に〔蝶子〕と別れたように思わせて金を取るハラやったんや。だから、お前をわざと葬式に呼ばんかったんや」と言った。
 心配で、毎日〔柳吉〕が帰って来る夢を見ていた〔蝶子〕は、その言葉を信じた。
 〔柳吉〕は「どやっ、なんぞうまいもんでも食いに行こか?」と〔蝶子〕を誘った。
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 《法善寺》の境内の中に『めおとぜんざい』という店があり、二人はそこに行くことにした。
 赤い提灯が吊るされたこの店は、しみじみ夫婦で行く店らしかった。
 〔柳吉〕はスウスウと高い音をたてて、善哉をすすりながら「こっこっここの『ぜんざい』はな、注文すると、一人に二杯持って来よんねん。女(め)と夫(おっと)という意味や。なんでか言うたら、昔、何とか太夫という浄瑠璃のお師匠さんが開いた店で、一杯山盛りにするより、ちょっとずつ二杯にした方が、仰山入ってるように見える。そこをうまいこと考えよったんや」と言った。
 〔蝶子〕はそれに対して「一人より、女夫(めおと)の方がエエという事でっしゃろ」とポンと返した。
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 それから二人は隣の《法善寺》の水掛不動さんに手を合わせた。
 〔蝶子〕はちらっと〔柳吉〕を見て、「あんた、これからどないするつもりです?」と聞くと、
〔柳吉〕は明るく「まかせるがなぁっ。頼りにしてまっせ、おばはん!」と答えた。
〔蝶子〕はあきれたような顔して、くすっと笑った。
 二人は《法善寺》横丁を寄り添いながら、ゆっくり歩き続けたという・・。   おしまい

紙芝居:『夫婦善哉』 その三

 『夫となり、妻となれば、他人に欠点と見えるものも、受け入れることが出来る。
 誰にも似ず、誰にもわからない二人だけの理解から、夫婦の愛というものが始まるのだ。』 〔山本周五郎 原作「柘榴」より〕
 以上、余談・・。
 
 それでは〔その三〕のはじまり~。
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 あくる日から〔蝶子〕は、〔柳吉〕の仕事を探し始め、まん良く《カミソリ屋》の店員の仕事を見つけてきた。
 そして〔柳吉〕はその店で働き始めたのだが、元々ボンボンの彼は三ヶ月で店主と喧嘩し、辞めてしまった。
 そんなある日、〔柳吉〕の元妻が、実家で《肺》が悪くなり亡くなったと噂を聞いた〔蝶子〕は、「寝覚めが悪い」と位牌を作り、毎日花を供え、手を合わせて拝んだ。
 そんな姿を見て〔柳吉〕は何も言わなかった。
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 やがて二年が経ち、〔蝶子〕のお金が貯まったので、芸者を辞め《カミソリ屋》を始めたが、流行らず店は閉めた。
 しかし諦めず、次は借金をして《おでん屋》を始めた。
「ワイが腕ふるって、エエ味のもん食わしたる」と〔柳吉〕は今度は張り切った。
 店の名前は、お互いの名を一字づつ入れ『蝶柳』とした。
 店は流行った!
 そんなある日、〔柳吉〕の妹が《養子》を貰って結婚する事となった。
 自分も出席しようと張り切っていた〔柳吉〕であったが、実家から「出席するな!」と連絡が入り、ヤケになった〔柳吉〕は、又、店のお金を全部持ち出し、遊びに使ってしまった。
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「おっおばはん、殺生やで!」とお金を使い込んだ〔柳吉〕に〔蝶子〕の折檻が始まった。
 天井に頭を打ちつけられ、「痛たた・・、もう二度とお金の使い込みはしません!」と誓う〔柳吉〕であったが、しばらくすると又、《放蕩》は始まり、結局《おでん屋》も閉める事となった。
 そして三たび、芸者に戻った〔蝶子〕であったが、決して《商売の道》を諦めはしなかった。
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 お金が貯まると、今度は「果物屋をやろう!」と思いつき、店を開いた。
「安いスイカでっせー!」と、元々キレイな声で愛嬌のある〔蝶子〕に、お客は大勢集まって来て、店は流行った。
 ・・が、今度は〔柳吉〕が病気になってしまった。
 病名は《腎臓結核》であり、長期の入院が必要となった。
 結局、看病に忙しい〔蝶子〕は、店を閉めざるを得なかった。
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 入院中の〔柳吉〕に、ある日、妹と娘がお見舞いに来た。
〔蝶子〕は「ハッ」と緊張したが、妹は「姉(ネエ)はんの苦労は、お父さんもこの頃、よう知って張りまっせ。『よう尽してくれてる』と言うてはります」と、〔蝶子〕にそっとお金を握らせた。
 本当は同情の言葉だったかもしれないが、〔蝶子〕は、その言葉を信じようとした。
〔柳吉〕の父親に解ってもらうまで、十年かかった。
 又、「姉はん」と言われたのも嬉しかったのである。
 つづく・・。
 

 
 

紙芝居:『夫婦善哉』 その二

 この紙芝居を描くのに、原作はもとより、豊田四郎監督の昭和30年の作品『夫婦善哉』のDVDを買って何度も見た。(《柳吉》は森繁久弥、《蝶子》は淡島千景)。・・ちなみに〔森繁〕の《柳吉》は映画ではドモっていない。
 そして、話に出てくる名物《料理店》にも何度も足を運んだ。『たこ梅』おでん、『自由軒』の名物カレー。そして今は無き『だるま屋』のかやくごはん。原作の名にもなった法善寺『夫婦善哉』のぜんざい・・。原作の通り、今もどの店も庶民的な《店構え》ばかりである。
 それでは続きのはじまり~。
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 ・・駆け落ちをしたものの、又、すぐに大阪に戻って来た〔柳吉〕は、「かめへん、かめへん。詫びを入れたら、すぐに許してくれるわ」と高をくくったが、父親は許してはくれなかった。
 落ち込む〔柳吉〕に、芸者を辞めた〔蝶子〕の腹は決まった。
「家に帰れぬはワテも同じ・・。それなら、これから〔柳吉〕と一緒に苦労をする」と、二人は路地裏の二階を間借りして、《所帯》を張ることにした。・・が、
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〔柳吉〕に働きがないから、又、自然と〔蝶子〕が《出張芸者》となって働くこととなった。
 〔蝶子〕は、三味線をトランクに入れて、あちこちに行き、生活費を稼いだ。
 くたくたになって帰って来ると〔柳吉〕が食事の用意をしてくれていた。
〔柳吉〕は十一才も年下の〔蝶子〕の事を、いつしか『おばはん』と呼ぶようになっていた。
 そして「おばはん、小遣い足らんぜ」と暢気な〔柳吉〕は相変わらず、〔蝶子〕からお金をせびって遊び呆けていた。
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 ある日、〔柳吉〕は「ちょっと実家に、正月の紋付を取りに行って来る」と言って出て行った。
 〔蝶子〕は「もう、戻って来ないのではないか?」と少し心配になったが、〔柳吉〕はしょんぼりしてすぐに帰って来た。
 ・・〔柳吉〕の話によると、父親は顔を見るなり「何しに来た!」と怒鳴りつけたそうである。
 〔柳吉〕の妻は、《籍》を抜き実家に帰り、子供は今、〔柳吉〕の妹が母親代わりになって面倒を見ているそうだ。子供にも会わせてもらえず、父親は〔蝶子〕のことを随分悪く言ったらしい。
 〔蝶子〕は「ワテのことを悪く言いはんのは、無理おまへん」としんみり言った。・・が、腹の中では「ワテの力で〔柳吉〕さんを一人前にしてみせまっさかい、お父はん、心配しなはんな!」と心に誓った。
 それから〔蝶子〕はチラシを閉じて家計簿を作り、無駄を慎み貯金を始めた。
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 しかし、落ち込んだ〔柳吉〕が、その貯金を黙って持ち出し、昔の遊び友達と、全部遊んで使ってしまった。
 〔蝶子〕は怒った!
 二・三日経って、夜遅くこっそり帰って来た〔柳吉〕に、「帰って来るとこ、よう忘れんかったこっちゃ!」と言い、首筋を掴んで突き倒し、頭をコツコツ叩いた。
「おっおばはん、何すんねん!無茶しいな」と〔柳吉〕は言ったが、二日酔いでされるままになっていた。
 そんな〔柳吉〕を見て、嫌になった〔蝶子〕は、外へ飛び出し、《浪花節》を聴きに行ったが、一人では面白くなく、お腹が空いて《ライスカレー》を食べることにした。
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 「こっここの『自由軒』のライスカレーは、ご飯にあんじょう、まっまっまむしたるんで旨い!」と、かつて〔柳吉〕が言ったのを思い出し、カレーを食べていると、いきなり甘い気持ちが胸にわいてきて、こっそり家に帰ることにした。
 すると〔柳吉〕は、イビキを掻いて寝ていた。
「あほんだら・・」と〔蝶子〕は〔柳吉〕をゆさぶって顔を見た。
 そう、心では、やっぱり〔柳吉〕に惚れているのだった。
 つづく・・。


 
 
 

紙芝居:『夫婦善哉』 その一

 11月22日は、〔イイ、フウフ〕の日・・だそうだ。
 それでは〔善い夫婦〕とはいったいどんな夫婦なのであろうか?
 ・・いや〔夫婦〕というより、〔善(良)い男と女〕の関係って、いったいどんな関係なのであろうか・・?
『夫婦和合してならざることなし』、という宗教的意味深い言葉もあるが、・・・僕自身、結婚(生活)23執念(・・ちゃうか?)周年を迎えた今も、良くわからない。
 この「紙芝居」は、〔夫婦(男と女)の善き有り方〕について考えてみようと思って作った作品である。(全四回)
ファイル 208-1.jpg (文学もの14) 織田作之助原作
 これは、今より少ーし前のお話。
 意志の弱い夫〔柳吉(リュウキチ)〕を、元芸者でしっかりものの女房〔蝶子(チョウコ)〕が、ささえ生きてゆくという面白く、そして切ない夫婦の物語・・。
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〔蝶子〕の家は貧乏であった・・。
 しかし、貧しいゆえ〔蝶子〕は《芸者》になったのでなかった。
〔蝶子〕は持ち前の陽気さゆえ、自分で「是非、芸者になりたい!」と思い、父に駄々をこね、一人前の芸者になったのである。
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 〔蝶子〕が20才になった時、11才年上の馴染み客〔柳吉〕と恋に落ちた。
 〔柳吉〕は、安化粧品・卸問屋のボンボン息子であった。
 この時すでに〔柳吉〕には妻子があったが、そんな事おかまいなし。深い仲になった〔蝶子〕を何度も外へ連れ出して・・、
「なっなんぞ、うっうまいもん食いに行こか!」と二人は食べ歩いた。
 どもる癖にある〔柳吉〕に言わせると、「うっうまいもんは、何といってもミナミに限る!」というのが持論であった。
ファイル 208-4.jpg (『たこ梅』のおでん)
 「いっぺん、俺の後についておいで」と、ついて行くと、一流の店には入らず、庶民的な店ばかりに入った。
 日本橋の『たこ梅』のおでん。『だるま屋』のかやくご飯。
 どれも、芸者をつれて行くような店構えではなかったが、「どっどや、うまいやろ!こっこんな、うまいもんは何処に行っても食べられへんぜ!」と講釈した。そう言われて食べると、なる程うまかった。
 しかし、こんな遊びも長くは続かなかった・・。
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 〔柳吉〕の父が《中風》で寝つき、銀行通帳を布団の下に隠した為、自由に使えるお金がなくなってしまったからだ。
 遊びに行くことの出来ない〔柳吉〕の元に、〔蝶子〕から「逢いたい」との手紙が来て、ついに《浮気》がバレた。
 怒る父親、泣く妻・・。
 そして気の弱い〔柳吉〕は、ついに〔蝶子〕と《駆け落ち》をして、家から《勘当》となってしまった。
 つっつっ、つづく・・(うつってしまった〔笑〕)

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