住職のつぼやき[管理用]

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白寿苑からのお客様

 特養老人ホーム白寿苑は、僕が毎月「法話会」でおじゃましている施設である。
 おととい、その「白寿苑内ケアハウス」から、うちの寺にお客さまがいらした。
 その御方、仮にKさん(男性:82才)としておく。
 Kさんは、毎月の「法話会」に必ず、出席してくださっている。
 いわば常連である。
 そのKさんから、先週、お寺に突然電話が掛かってきて、お寺に参りに行かせて欲しいとおっしゃる。
 前々から、この方は一度お参りしたいとおっしゃっていたのだが、ついに本当にやって来られた。(本来、足腰も丈夫な方なのだ)
 白寿苑から、電車とタクシーを使っても、一時間半は掛かる。
 そこから、思い切って来られるというのは、何か理由があるのだろうと薄々感じはしたが、やはりその通りだった。
 Kさんは、お寺に着くなり、ご自分の家族の名前の書かれた「過去帳」の写しを出されて、若い頃に家出して行方不明となり、今だ音信不通の弟さんのお話をされ出した。
 「・・50年も前のはなしなので、もうすでに(弟は)死んでると思うのですが、弟は可哀想な奴なんです。自分の直らぬ病気を苦にして絶望し、突然18才で家出してしまったんです。警察に捜索願いを出したのですが結局解らず終いでした。・・私、この年になっても、気になって気になって。・・もう会えんと思ってますので、弟にお経をあげてもらいたいと思いまして来ましてん。」と、おっしゃられた。
 それで、ご一緒に本堂でお勤めさせて頂いた。
 人には様々な過去がある。
 50年前といえば、もう歴史だ。
 しかし、生き別れた家族がある人にとっては、その若い頃の姿のままで、時間がストップされているらしい。
 Kさんは、お勤めが終ると「これで、何か胸のつかえがすっと落ちたように思いました」と言って、来られた時とは違う表情で帰ってゆかれた。
 僕は、お寺の仕事(役目)というのは、さまざまなものがあるのだなと改めて思った。 

 
 
 

 

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