住職のつぼやき[管理用]

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映画「エンディングノート」を見て

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 日本映画「エンディングノート」(砂田麻美監督)を見てきた。
 新聞広告を見たら、わずか一週間だけのロードショーみたいだったので、急いで見て来た。

 ストーリーは、熱血サラリーマンだった主人公(砂田知昭氏〔実名〕=69才)が、会社を退職し、第二の人生を歩み始めた時、末期の胃ガンが発見され、余命半年を宣告される。
 その時、主人公は、残される家族の為、そして自分の人生の総括の為に「自分の死の段取り=エンディングノート」を作成し始める。
 そんな姿を、実の娘で(この映画の監督でもある)麻美さんが、カメラで(臨終の時まで)、時に可笑しく、時に悲しく、日常を追うという(ある意味凄みのある)ドキュメンタリー映画である。
 
 僕が気になったのは、主人公が俄かクリスチャンになって、教会でお葬式をして欲しいというシーンで、「どうしてクリスチャンになったの?」と監督(=娘さん)が聞くと、「(別にキリスト教に救いを求めた訳では無く)教会がキレイで気に入ったのと、キリスト教のお葬式の値段がリーズナブルだったから」という場面である。(ただし、主人公はカメラに向かって「ここは撮影を止めてね」と言っているのだが、監督は回し続けた・・。)
 ここは、我々仏教者に対する痛烈な皮肉である。(坊さん(お寺)の葬式は、値段が高いというのが世間の常識になっているのか?・・トホホホッ。)
 この映画、妻と娘と一緒に見たのであるが、妻も「そら、神父さんは、お葬式でお金をぼったくるというイメージは無いはなぁ。」と後で言ったので、僕にはダブルパンチであった。(言っときますが、観念寺はリーズナブルですよ。(笑い))
 長くなったがもう一つ。ラスト近くで意識が薄れてゆく主人公の父が、病院のベットで「これからいいところへ行く」と、ポロリというシーンがある。それに対して集まった家族は「それはどんな所なの?」と問うと、「それはちょっと、教えられない」と言って、家族みんなを笑わせる。
 またラストのシーン。・・教会でお葬式が終った後、霊柩車は斎場に向かって出発する。その時、娘がナレーションとして「それで今、どこにいるの?」と聞くと、父に変わって又、娘(=監督)が「それはちょっと、教えられない。」というシーンで終っている。
 この場面、実に感動的なラストシーンだったのであるが、僕の娘は気に入らなかったらしい。
 娘はムッとして言っていた、「俄かでも、クリスチャンになったんやったら『今、すばらしい天国にいます』とか言わんかいな。」と・・。
 『そやなぁ・・』と思わず僕も思ったが、でも、僕も最後の時を迎えたら同じ事を言うかも・・『今から極楽浄土に往きます。それで極楽浄土ってどんな所かって?・・それはちょっと教えられない』と。
 

コメント一覧

lako 2011年10月04日(火)18時35分 編集・削除

そうか!!キリスト教の御葬式って安いのですか!?
それは、ご住職にとってはドキリでしたね。

エンディングノート自体を、何年か前に買いました。
でも、いざとなるとなかなか書けないもんですねぇ。
今も、そのまま放置しています。

以前訪問していたお婆さんが自分の死に装束を風呂敷に包んで押し入れに入れてはって「なんかあったらここに入っているので覚えといてや」って言われました。
お婆さん曰く、昔は40過ぎたらそういう用意を自分でしとくのが心得だったそうです。
へぇぇぇぇ

カンネン亭 2011年10月04日(火)21時47分 編集・削除

らこはん

そのお婆さん、どないなってはるんやろ?
 又、違う人に同じ事を頼んではるんやろかなぁ?
 悲しい話だなぁ・・。
 日本人って不思議だなぁ。(byサントリーの昔のコマーシャル)

lako 2011年10月04日(火)22時00分 編集・削除

そのお婆さんは、今も元気ですが
施設に入所されました。
人生波乱万丈なお婆さんで、可愛がってもらいました。

カンネン亭 2011年10月05日(水)13時27分 編集・削除

らこはん

僕も月参りに行ったら、「住職さん、わてが死んだら、息子や孫に『このこと=遺言的な事』を話してや」と、お爺さんやお婆さんに言われます。・・その度にメモ帳が重く(いろんな意味で)なっていってますわ。

愛子 2011年10月08日(土)03時00分 編集・削除

実は日曜日、余命を宣告された方と会います。
どんな風にお話しできるか分かりませんが、
もう、電話でも息も切れぎれ話されるので相当辛いと思います。

家族のために、身の回りの整理を始められたので、出来る事は協力したいと思いますが、いざとなると何をすれば良いのか分かりませんね。

私の父は家で家族に看取られました。
幸せな最期だったと思います。

ええとこ行く・・・とは言いませんでしたが、
もし、幽霊になれたら、出て来てや!と約束しました。

わはは

カンネン亭 2011年10月08日(土)13時45分 編集・削除

愛子さん
 
 老病死は、誰でも避けれんことです。
 その方に寄り添い、お話を真剣に聞かせて頂くだけで好いのではないでしょうか。

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