住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「地獄のはなし」 その2

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 やがて火車は、薄明るい世界に出た。
 車は止まり、鬼は悪兵衛を外へ引っ張り出して言った。
「さぁ、ここからは独りでゆくのじゃ。あの岩山を越えるんじゃ!」と。
 悪兵衛は、しかたなく岩山を登り始めた。
 しかし、岩山は尖っており、一歩進むごとに足の裏が裂け血が噴き出した。その為、痛みでなかなか登ることができなかった。
 それを見て、鬼は「お前は生前、悪いことばかりしてきた。だから今、その報いを受けておるんじゃ!」と笑った。
 悪兵衛は「・・あぁ、生きてる間に、善い事をしておけば良かったなぁ・・」と呟いた。
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 ようやく、岩山を越えた悪兵衛の目の前に、今度は大きな荒れ狂う河が現れた。
 そこが、いわゆる《三途(さんず)の川》であった。
 そして、その川辺には又、違う鬼達が居て、悪兵衛に「さぁ、悪いことをした報いだ。泳いで渡れ!」とムチを振るって言った。
 悪兵衛は「・・あぁ、生きてる間に、善い事をしておけば良かったのぉ・・」と呟き、その河に飛び込み、水を飲み溺れながらも、必死で泳いだ。
 それを見て鬼達は「生きている間に善い事をしておけば、浅瀬か、黄金の橋を渡れたものを・・」と言った。
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 《三途の川》をようやく渡り終えた悪兵衛に、今度は川辺で、大きな鬼の姿をした〔奪衣婆(だつえば)〕と云うお婆と、〔懸衣翁(けんえおう)〕と云うお爺が待っていた。
 お婆は「さぁ、ここからは裸になってゆくのじゃ!」と、悪兵衛の着物を無理やり剥ぎ取り、《衣領樹(えりょうじゅ)》という木に登っているお爺に、その着物を渡した。
 お爺が、その着物を木の枝に引っ掛けると、不思議なことに、象の鼻のように、その着物は大きく揺れた。
 お爺はそれを見て、「これを見ろ!この枝はな、悪い事を一杯した奴の着物は、大きく揺らすのじゃ!・・はっはっはっ、お前は間違いなく《地獄》行きじゃのぉ・・」と言って笑った。
 悪兵衛は「・・あぁ、生きてる間に、善い事をしとけば良かったなぁ・・」と三度呟いた。 つづく

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