住職のつぼやき[管理用]

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「お前の母ちゃん、出べそ~」

 お風呂を掃除していたら、寺の周りで、近所の子供たちが走り回って遊んでいる声が聞こえた。
 「あほー、ばかー、まぬけっー、お前の母ちゃん出べそ~、電車に轢かれてぺっちゃんこ~」・・言い合いをしている。
 『そうか、今でもこの『捨て台詞的悪口??』は使われているんや・・』
 僕は、風呂用洗剤をシャワーで流しながら、改めてこの台詞の意味を考えてみた。
 ・・まぁ、「あほ、ばか、まぬけ」の三点セットは、相手にダメージを与える、うまい悪口になっているとしよう。
 ・・しかし、問題は次のセリフだ。
「お前の母ちゃん、でべそ~」、・・これは頂けん。
 これは、直接相手を攻撃する言葉になっていないではないか!
 「お母ちゃん」を攻めている。・・しかも、「出べそ」がどうしたというのか!
 又、正しく言うなら「お前のへそは、出べそ~」が正解だろう。
 あぁ、それなのに、それなのに「母親」の悪口を言う事によって、相手に鋭い一撃を加えようとしている。
 配水管にアワが流れていくのを見つめながら、僕は「あっ」と思った。
 ・・そうか、昔、『母』は、『グレート・マザー』で、家庭の中心的存在(司令塔)だったんだ。(今でもか・・?!)
 母を攻撃されたら、だれでも立ち直れないぐらいのダメージを受けることになったのだ。・・しかも『へそ』は身体の中心にある。 そこをピンポイントで襲ったのだ! 真ん中の真ん中を攻撃するように計算されたセリフ! 恐るべし!『母ちゃんの出べそ』!
 そんな『脳科学』的計算された攻撃の謎が、少し解ったような気分になった僕を、又一つ次の疑問が襲った。
 「電車に轢かれてぺっちゃんこ」って、ちょっと日本語的におかしくないか?・・と。
 普通、電車に轢かれたら、『即死』ではないか。
 それを「ぺっちゃんこ」では、又、空気を送り込めば、復活するような感じがするではないか・・。 どうも言葉に優しさと思いやりがある。
 ・・そうだ、おそらく「お前の母ちゃん出べそ」で、立ち直れなくなった相手に、追い討ちを掛けるようなヒドイ攻撃はできない!この「電車に轢かれる」という悲劇をつけ加えるのは、忍びないと考えたのだ。昔のじゃりん子は『武士の情け』を知っていたのだ。
 ・・だから、密かに『復活』を思わすような、こんな言い回しにしたのだ・・と思った。
 晴れ晴れとした気分で、バスルームから出る僕に、今日も水を使い過ぎたような一抹の後悔だけが残った。・・そしてやっぱり、子供でも悪口は良くないなぁ・・とも思った。
・・気をつけよう。明日のエコ(エエ子)では間に合わない。 完

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