残念ながら、コウメちゃんの初めての子供は死産であった。
・・犬の話である。
コウメちゃんとは、うちの寺の近所の門徒さん宅の〔柴犬〕である。
おとといの夕方、〔お参り〕とは別の用事で、そこの御宅を訪ねた時、奥さんが犬小屋の前でしゃがみ込んでおられた。
『何をされているのか?』と近づいて見れば、コウメちゃんのお腹を一生懸命に「頑張れ、頑張れ」と言って、さすっておられるのだ。
そして、コウメはというと、子犬を出産しかけたまま、足がひっかかり、なんとも言えん苦しそうな声で鳴いているのだ。(ひっぱり出せない!)
奥さんが言われるには「朝に破水したまま、まだ産み落とせないのです。・・いつも行ってる病院は土曜で休みやし、体力も落ちて来たみたいやし、どないしょうかと思って、今旦那に電話したところなのです」と言われた。
僕はとっさに、〔動物病院〕で勤められてる別の檀家のお嬢さんの事を思い出して、「電話してみますわ!」と言って、寺に帰り連絡を取った。
上手いこと家にお嬢さんは居られ、病院に連絡を取って下さり、帰って来た旦那さんと奥さんは、コウメちゃんと一緒にそこの病院へ向かった。
・・夜、寺に電話があって「子犬(一匹だけだった)はダメでしたが、コウメは手術せず出産できて命は助かりました。今、コウメも家に帰って来て休んでいます。元気です。ありがとうございました」という事であった。
はじめての子供は残念だったが、コウメは助かって一応ホッとした。
僕は、〔犬〕というものはすべてにおいて〔安産〕なのだろうと思っていたが、やはり、一つの命を生むというのは、(どんな動物でも)そんな安易なものではないのだと、改めて考えさせられた。(犬は難産の場合、無事に子供を産んでも育児放棄をする確率が高いらしい。それで子供の死ぬ確率も高いと言う事である。・・以上、余談)
・・こんど、お見舞いに〔ジャーキー〕をコウメちゃんに持っていってやるか。
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