住職のつぼやき[管理用]

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筋ジストロフィー青年との会話記録 その3

 故・N君は詩人である。詩集も三冊出版されている。
 尾崎豊と宮沢賢治が好きだったN君・・。
 これは、そんな彼との会話記録である。

平成8年3月14日
 今回が初めての自分一人での病院訪問。はたして僕を覚えていてくれてるだろうか、少し不安であった。
 が、僕を見るなり「ああ、又来てくれたんですか・・」と言ってくれて一安心。
 今日は、彼が出版した詩集の話をした。
 一冊目の詩集は、彼が16~8才の頃に書き溜めた詩で、読ませてもらって思うのは、自分の病気に対する苛立ちや悲しみのエネルギーが噴出している感じがした。
 そして二冊目は、19才以降のもので、こちらは悲しみを通り越して、何か悟っているかのような感じで、他者への思いやりの気持ちや優しさが強く出ているような感じがする。
 そんな感想を彼に伝えたら、彼は「僕と云う《存在》は自然の中の一部であるような、そんな感じがするのです。・・体の動きが、前より不自由になって、書きたい詩の内容も少し変わったような気がしています。・・ひょっとして、兄ちゃんとの事も〔超えた〕のかもしれない。(N君の兄も同じ病気で小さい時に亡くなっている)」と言った。
 兄弟の間にどのような思い出があったのかは、教えてくれなかったが、少しN君の気持ちに寄り添えたような気がした。
 つづく

 


 

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