「おーよしよし、わしが育ててあげようのう。」と、白隠さまは赤ん坊を背負い托鉢に出て、お乳などを貰い歩きました。
この事件で、白隠さまはすっかり信用を無くしてしまいました。
しかし、白隠さまは何の弁明もせず、赤ん坊と暮らしたのです。
「お父様、ごめんなさい。どうかお許しください。私は嘘をついておりました。
あの赤ん坊は、白隠さまのお子では無いのです。
白隠さまのお子と言えば、許してもらえると思っていました。
・・なんと私は愚かであったでしょう。
どうか白隠さまにお詫びして、赤ん坊をお返し頂けるよう頼んではいただけませんでしょうか?!お願い致します。」
と、娘は良心の呵責に耐えきれず、ついに父親に本当のことを話しました。
びっくりしたのは父親です。
「なっなんだって!私はとんでもないことをしてしまった。」
「和尚さま、申し訳ございません。私の間違えでした。
失礼の数々、どうかどうか、お許しください!」と、父親は托鉢途中の白隠さまを見つけて、娘と共に深く謝りました。
そして赤ん坊を返して貰いました。
「ああ、そうですか。それは良かった良かった。ではその子を大事に育てて下さいよ。」と言って、白隠さまはそれ以上何も言わず、去って行きました。
その姿に父親と娘は、頭をいつまでも下げて見送ったと言うことです。
おしまい
次回は『武士と白隠さま』です。つづく
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