住職のつぼやき[管理用]

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《針》と《糸》

 今日〔月忌参り〕をさせて頂いた、檀家さん宅での話・・。

 玄関前まで着たら、何やらお家の中から〔おばあちゃん(85才)〕と〔ご子息さん(65才)〕の言い争う声が聞こえてきた。
 僕が中に入ると、ご子息さんが、「あぁ、住職さん、ちょうどエエ時に来てくださった!今、お母ちゃんとケンカしてましてん。『この《針》に《糸》を通せ。お前、私より若いねんから、すぐ出来るやろ』と言いよりまんねんけど、ワシも65才でっせ。目も悪くなってんのに、そう簡単に通せまっかいな。 〔虫眼鏡〕を使ってやってまんねんで。・・そら、お母ちゃんに比べたら若いやろうけど、・・だんだん腹立ってきて、今ケンカしてましてん。住職さん、この《針》に《糸》通してもらえませんか?」と言われた。
 僕は「おやすいご用で」と言いながら、僕も最近、老眼が出て来た為、メガネを取って、針に糸を入れたら、一発でうまくいって内心ほっとした。
 ご子息さんは、「おおきに。お母さんからもよーくお礼言うときや。住職さんが来るのが、後一時間遅かったら、後一時間ケンカしとかなあかんかったわ。ははははっ」と笑われた。そして僕もそのお母さんも一緒に笑った。

 それだけの話なのだが、帰り道、『確か〔仏典〕にもこれによく似た話があったなぁ』と思い出した。

 ・・はっきりとは覚えていないのだが、確か、おシャカ様のお弟子で〔目の悪い方〕がおられて、《針》に《糸》が通らないので、誰かに助けてもらおうと「どなたか、私の為に《徳》を積もうと思われる方はおられませんかー?」と訴えていたら、そこにおシャカ様が来られて「私も《徳》を積みたいので、やらせてくれるかな」言われた。
 お弟子は「とんでもない。あらゆる《徳》を身につけられたおシャカ様には、今さら《徳》を積むなどは必要のない事」と拒んだら、おシャカ様は「私も世界の人々の為に《徳》をもっともっと積みたいのだ」と言われ、《針》に《糸》を通された。・・・と、そんな話があったような気がする。はっきりとは覚えていないのだが、そんな話を思い出した。

 ひょっとしたら、今日、僕もひとつ《徳》を積ませていただいたのかもしれない。はははっ。

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