住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「妙好人 八尾のおしもちゃん」(その3)

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(善立寺さま)
 ここまで、紙芝居の事を書いていたら、おしもちゃんがお参りしていた[八尾市]の『善立寺』様(八尾木町)付近に、是非行ってみたくなった。
 紙芝居制作前に、善立寺ご住職には一度お電話で、妙好人:おしも(阿霜)について、いろいろとお話をお聞きした。
 しかし、現在お寺が修復中ということで、お寺に実際に行き取材させて頂くのは遠慮したのだ。
 だが、やはり一度行かねばと思い、今日、車で行かせて頂いたのだが、(写真は遠慮気味に撮ったが[すみません])まだ修繕中であり、やはり訪問は遠慮した・・。
 「ここがおしもちゃんが活躍した町か・・。」と、トラックの往来など激しい交通網を、ひとつ町中に入ると、そこには(タイムスリップしたかのように)城下町ような古い町並みが現われた。そして、そこにポツンと工事中の善立寺さまのお姿が・・。
 やがてそこの門前に、帰宅途中の小学生たちの姿がちらほら。おしもちゃんもその一人として時空を超えて現れたような錯覚を覚えてしまった。・・余談、終わり。
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 それからしばらくして・・、おしもちゃんは、又お父さんと一緒に、[善立寺]さまにお参りしました。
 その時のことです。
 この日のご住職のご法話のテーマは『地獄』でした。
 「ええですか、皆さん。人のお金を盗んだものは『黒縄地獄』という、恐ろしい世界に往かねばならんのですよ。」とご住職は話しました。
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 その時、おしもちゃんは真っ青になりました。
 忘れていた自分の秘密を鮮明に思い出したのです。
『あかん⁉わては絶対に地獄落ちや! そやかて、行燈の中や賽銭箱のお金を盗んだのやもん。』
 と、震えあがり、その日は眠ることが出来ませんでした。
(又また余談だが、実際に自分の犯した罪で「地獄に往かねばならないと思い込み、怖くて眠れない」という女の子の悩みを僕は聞いたことがある。・・そして、僕自身も子供の頃、親の財布からお金を盗って買い食いした経験があるので、[地獄往き]という悩みを(深刻ではないが)持ったことがあり、おしもちゃんの事は笑えない。)
 次の日、事の次第をお父さんにすべて話し、謝ったおしもちゃんは、お父さんから[二文]の銭をもらい、お寺に謝りに向いました。
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 「住職さまー!わては二文の銭を盗みました。絶対に地獄落ちです!どうしたら助かるのでしょうか?今からお金を返してもあかんのでしょうか?・・わぁ、絶対にわては地獄落ちや!助けてください、仏様、住職様!・・わぁーんわぁーん」と泣き始めました。
 それを真面目な顔でじっと聞いていた、お寺の[正空]住職は、ただ優しい顔で「南無阿弥陀仏、ナムアミダブツ」と称えていました。
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そして、やがてご住職は語り始めました。
「これ、おしもや、大丈夫やで。
 阿弥陀さまという仏様は、正直なおしものような子を、そのまま救うて下さる仏様なんや。
 ・・お前は、心から反省している。懺悔している。阿弥陀さまは、ちゃんと解ってはるんやで。
 地獄には落ちへんで。おしも・・。
 仏様に感謝しよな、おしも。南無阿弥陀仏・・。」
 それを聞いて、おしもちゃんは「ほんま、ほんまに地獄に落ちへんの?・・よかった、良かったー!南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。」と、泣き声を挙げながら、手を合わせました。 つづく 

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