住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「妙好人 讃岐の庄松さん」(その5)

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 又、このような逸話も残っています。
 或る日、かっぷくの良い〔代官〕が、お供をつれて庄屋さんの所へ泊まりにやって来ました。
 その日の晩、代官はお風呂に入りました。
(代官)「おーい、誰ぞ、わしの背中をこすれ」と、叫ぶと、
「へーい」と、この日の風呂焚きに来ていた庄松さんが、風呂場に入って来ました。 
 そして、代官の背中をこすり始めました。
 ・・・が、突然、その手を止めたかと思うと、何を思ったか、
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(庄松)「お代官、盗み食いしてよう肥えとるのぉ!」と言って、背中をバシッ!と叩いて出て行ったのでした。
 言われなき事を云われたお代官。おそらく、度肝を抜かれたのか、その場では何も言いませんでした。
 しかし、風呂から上がった代官は、「おい庄屋!すぐに、先ほどわしの背中をこすった者を呼べ!」と言ったのでした。
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 さぁ、大変です。
 庄屋さんは青くなって代官の所へ飛んでゆき、「おっおっお代官さま!どうかお許しください。あいつは、自分の名前も忘れてしまうような馬鹿なんです。どうか、お手討ちだけは、ご勘弁を!」と、平謝りです。
 しかし代官は、「いや、ダメだ。すぐに呼んで来い!」と、命じられ、皆は「だめだ。・・これはお手討ちは免れまい。」と諦め、庄松さんを呼びに行きました。
 やがて庄松さんは、ケロッとした顔で部屋の中に入って来ました。
(代官)「お前はなぜ、わしを盗人呼ばわりしたのか?!」と、問いただすと、
(庄松)「わしは、いくら働いても、いつも食うか食わずの生活をしとる。しかし、お代官様は、わし等が汗水働いて作った米をゴッソリ取り上げて食い、よう肥えてふんぞりかえっておられる。・・何か背中を見とったら、『わし等の恩を忘れんで欲しい』と思い、気がついたら叩いておった。すまんことしました。」と、胸を張って堂々と云いました。
 それを聞いて、代官は「うーん、お前は正直者じゃな。許してやる」と言って、その場は丸く納まったという事です。 つづく

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