住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「妙好人 讃岐の庄松さん」(その3)

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 又、或る日のこと。
 庄松(しょうま)さんは、京都のご本山『興正寺』様へ、村の仲間たちと一緒に〔帰敬式(ききょうしき)〕を受けに行きました。
 〔帰敬式〕というのは、(本堂の御仏前で)一番偉い『法主(ほっす)』様から、一人ひとりの頭に〔おかみそり〕を当ててもらい、正式に仏弟子となる儀式のことです。
 本堂では、皆が神妙な面持ちで頭を下げて、法主様におかみそりを当ててもらっています。
 ・・そして、さぁ(問題の男)庄松さんの順番になった時です。
 法主様が、庄松さんの頭におかみそりを当て終り、隣の人に移ろうとした時・・、 
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 なんと、庄松さんは法主様の袖を引っ張り、「あにきっ、覚悟は良いか?」と呟いたのです。
 静寂な本堂に、その声は響き渡り、一同は騒然となりました。(そら、なるやろ!)
 しかし、さすがに法主様は、何事もなかったかのように、儀式を最後まで続けられました。
 ・・しかしながら、その後、庄松さんは、法主さまの部屋に呼び出される事になったのです。(えらいこっちゃ!)
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 庄松さんの仲間の代表は、それより先に法主様に面会し、必死で謝りました。
(可哀相な村の代表)「ほッ法主さま、どうか、庄松を許してやって下さいませ!・・あっあいつは、お金の勘定もできない馬鹿なんです。どうかお慈悲を!」と。
 しかし法主さまは、「いや、そんなことはどうでも良いのだ。私はなぜ、あの男があんな事を言ったのか?それが知りたいのだ。」と、おっしゃいました。
 そして、庄松さんが、いよいよ入ってくることになったのです。 
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(法主さま)「庄松とやら、お前はなぜ?先ほど、私の袖を引っ張ってあのようなことを言ったのか?」と、尋ねられると、
(庄松)「へい、わしは、法主さまがそのような赤い立派な衣を着ておっても、我々皆、地獄落ちは逃れることが出来んので、法主さまは〔死後の覚悟〕は出来とるんか?心配で聞いたんじゃ」と、答えました。
 それを聞いて法主様は、「ほぉ、すると、お前は私を心配して、あのような事を言ったのか。・・では聞こう。庄松は、信心を得ておるのだな?」と、再び尋ねられました。
(庄松)「へえ、得とります。」
(法主)「それでは、お前は〔死後の覚悟〕も出来ておるんじゃな?」
(庄松)「それはわからん。」
(法主)「・・それで、お前は大丈夫なのか?」
(庄松)「何ともない。そんなことは、阿弥陀さまに直接聞いてくれ。それは仏様の仕事じゃから。はははっ」と、問答が続きました。
 それを聞かれた法主様は、「・・はっはっはっ、その通りだ。いちいちもっとも。庄松よ、私をアニキと呼んだからには、今日からお前と私は兄弟じゃ。誰か、酒を持て。今から兄弟の杯をとらす。」と、大変上機嫌であったそうです。
 この日以来、庄松さんと法主様は、本当に兄弟のような御付き合いを続けられたそうです。(注意:良い子のみんなは、決して真似をしないようにしましょうね。)
つづく

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