住職のつぼやき[管理用]

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仏さまに見えたお姉さん

 夜に開催している福祉施設での「法話会」は、(昼間とは違い)時間がゆったり流れ、会が終ってからもお部屋に帰られず、そのまま会場に居残られて、お話しされる方が多い。(僕の帰宅時間は遅くなってしまうのだが・・〔苦笑〕)
 今日もそんな一人の女性が居残られ、僕に、自分たち(姉妹)の(重くそして感動的な)体験談をお話をして下さった。
 その話をされた(中年)女性は入所者ではなく、入所されているのはその方の姉で、重度の脳性麻痺と肢体不自由がある為、(心配もあり)妹であるこの方が毎日仕事が終ってから、顔を見に、ここに来られているそうだ。
 その重度の姉さんは、昔ばなしや、仏さまの話が好きだそうで、妹さんに付き添われ、この法話会場まで来られるのだ。
 どこまで、話を理解してくださっているかは解らないが、この姉さんは一生懸命に話を聞いてくださっている。
 さて、その妹さんの話。
 昔、自宅でこの姉を介護していた時、介護の中心だった母が亡くなり、自分も絶望し、この妹さんは、姉の首を絞めて殺害し、その後自分も死のうと思ったそうだ。
 そして、首に手をかけた瞬間、その姉がニッコリ微笑み、「死んだらあかんで・・、良いことあるよ。」と言われたらしい。
 そう、「私を殺さないで」ではなく、おそらく自分を殺して、妹自身も死のうと思っていた事を察知したかのようで、『妹よ死ぬな』と言いたかった言葉のようだったそうなのだ。
 この妹さんは、その時、この姉の顔が仏さまに見えたらしい。そして僕に言われた、「仏さまなんか、世の中に居ないと思ってました。でも、姉は間違いなく仏さまでした。・・そう見えたんです。・・亡くなった母は、姉を『ねぇちゃんは、生き神さんやで』とよく私に言ってたんですけど、私は『姉は姉や、人間や』と思って信じませんでした。・・でも、やっぱり姉は仏さんなんですよ。・・今は私が母の代わりです。姉を仏さんやと思って、逢いに来ているんですよ。」とおっしゃった。
 そして、「遅くまで、話を聞いてくださって有難うございます。又、来月、法話会に姉と一緒に寄せてもらいます。」と言い、重そうな鞄をさげて去って行かれた。
 僕は「こちらこそ、お話聞かせて頂いてありがとうございます。又、来月来てくださいね。」と言って別れた。
 『そうか、仏さまって、人間なんや』と、改めて思った、今日の出会いだった。
 

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