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紙芝居:「走れメロス」 その2

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 王はメロスに向かって言いました。
「お前はわしを殺しに来たんだろう・・。誰に頼まれて来たのじゃ。命は助けてやるから言うてみよ。」と、顔面蒼白で眉間にしわを寄せて問いました。
 「私は病気の王から、町を救いにココに来たのだ!」と、メロスは悪びれずに答えました。
 「何?・・お前がか?」と王は笑い、そして、「しかたのない奴じゃ。・・お前などに、このわしの〔孤独の心〕がわかってたまるか?!」と言うと、メロスは、
「言うな!」といきり立って叫びました。そして、
「人の心を疑うのは、もっとも恥ずべき悪徳だ!王は町の人々の忠誠までも疑っておられる」と続けました。
「だまれ、だまれ、だまれ!・・下賤の者め!人間とはもともと私欲の塊りではないか。口でどんな清らかな事を言っても、わしは騙されんぞ!」
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 王は続けて言いました。
 「お前だって今、わしが『磔の刑じゃ!』と命じたら、泣いて詫びよう。」
 それを聞いてメロスは、
「私は死を恐れはしない!ちゃんといつ死んでも良いという覚悟はできているつもりだ。命ごいなど断じてしない。ただ・・、」と、メロスは足元に視点を落としました。
「ただ?・・ただ何じゃ?」
 「王よ、もし私に情けを掛けたいと思うなら、〔三日間〕だけ日限を頂きたい。・・私には一人の妹がいる。三日の内に、私は村に帰り、妹に結婚式を挙げさせ、そしたら又必ずここへ帰って来る。」
「嘘をつけ!!」と、それを聞いて王はしわがれた声で低く笑いました。
 メロスは「そんなに私が信じられぬなら、・・そうだ、私にはこの町に無二の親友〔セリヌンティウス〕がいる。彼を人質としてココに置こう。〔三日目〕の日暮れまでに、私が帰って来なかったら、この親友を殺してくれ!」と言いました。
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 それを聞いた王は、残虐な気持ちでそっと微笑み、
『生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないに決まっている。・・そうじゃ、この嘘つきに騙された振りをして、放してやるのも面白い。・・そして、身代わりの男を〔三日目〕に殺してやる。『ああっ、これだから人は信じられぬ!』と、町の奴等の前で、わしは悲しそうな顔をして叫んでやる。世の中の〔正直者〕というやつばらに、うんと見せ付けてやる。』と、心の中でそう思いました。そして、
「よし、わかった。お前の言う通りにしてやろう。〔三日目〕の日没までには帰って来いよ。・・遅れたら、お前の〔身代わり〕は必ず殺すぞ!・・・まぁ、ちょっとだけ遅れて帰ってくるが良い。そうすれば、お前の命だけは助けてやる。・・どうじゃ?」と言いました。
 メロスは「何を言うか!」と叫びました。
 「はっはっはっはっ、自分の命が大事だったら、ちょっとだけ遅れて帰って来い。・・お前の心はわかっておるぞ。」と、王はそう言って奥の間に引っ込んでゆきました。 つづく