紙芝居『良寛さまの涙』
昔、越後の国(今の新潟県)に、[良寛(りょうかん)]様という、心の優しいお坊さまが一人で住んでいました。
ある晩、良寛さまの庵に、実弟の[由之(よしゆき)]が訪ねて来ました。
由之は、長男であった良寛さまが出家した為に、家業を継いだ弟です。
(由之)「兄さん、実はご相談があって参りました。」
(良寛)「なんじゃ、改まって・・。」
(由之)「実は、一人息子の[馬之助]のことなのです。
息子の馬之助は、ここ最近、まじめに働かないのです。・・よく家を抜け出しては、夜遊びをします。
朝方帰って来て、私が注意をすると、今度は何日も部屋に閉じこもってしまい、出てきません。
何を考えているやら・・、いったいどうしたものかと・・。
そこで、お願いなのですが・・。」
(由之)「兄さん、この通りです。
どうか、馬之助に説教をしてやって下さい。
馬之助は、兄さんをたいへん尊敬しております。
兄さんが注意をして下されば、馬之助はきっと反省して、真人間に戻るでしょう。」と、由之は頭を下げました。
(良寛)「困ったのぉ・・。」
良寛さまは、本人の心が動かねば、説教など、まったく無駄になる事を知っていました。
しかし、弟の心中を察すると、断ることが出来ませんでした。
そこであくる日、良寛様は生家へと向かいました。
(良寛)「やぁ、馬之助。元気か?遊びに来たぞ。」
何も聞いていない馬之助は、
(馬之助)「おじさん、お久しぶりです。よくいらっしゃいました。さぁ、上がって、上がって・・。」と大はしゃぎ。
(良寛)「では、上がらせてもらいますよ。」 つづく