「お酒の飲みすぎだ。・・そうだ、貧乏長屋に行ってお水を一杯もらおう。」と、町に着いた長一は、長屋へと向かいました。
・・が、長屋に着いた長一はびっくり。
長屋は誰も居ない空き地になっていました。
「おかしいなぁ、・・確かにここは、長屋だったはずなのに・・?」
そこで、再び私(地蔵)が姿を現し、
(半人前地蔵)「だから言ったろう。・・お前がこの世に生まれなかったので、貧乏長屋は住人たちは、お前からお金が借りれず、皆〔夜逃げ〕してしまったのさ。・・そして長屋は無くなり空き地になった。つまりそういう事だ。」
「嘘だっ!・・これは幻だ!」と、長一は叫びました。
その時です。
偶然、目の前を長一の嫁が通り掛かりました。
「あっ」と叫んで、長一はその女性の元に走って行きました。
(長一)「おいっ、おまえ!・・お前まで私を知らないなんて言わないよなぁ?!」と、その女性の肩をつかみました。
そして、「大変だったんだよ。・・せっかくお金を借りたのに、途中で落としてしまったんだよ。」と言うと、
その女性は、「はっ離して下さい!私はあなたの顔も見たことありません!馴れ馴れしく触らないで下さい!・・変なことすると人を呼びますよ!」と叫びました。
長一は慌てながらも「何を言うんだいっ!お前の夫の長一だよ。私の子供たちは、いったい今どこに居るんだい?!」とさらに聞くと、
その女性は、「離してください!私はずっと独身です。子供も生んだことなどありませんっ!・・誰かー、助けてー!」と叫びました。
その声を聞いて、町の人達が集まってきました。
「どいつだ、どいつだ!娘さんをかどわかす奴は!・・お前かっ!」と、町の住人たちは棒や箒を持って迫ってきました。
「うわーっ!」と叫び、その場から長一は全速力で駆け出しました。
(長一)「お地蔵さまー!助けてくださいー!」
そして長一は、いつしか、元居た橋の上に戻っていました。
そこで、再び私(地蔵)が、姿を現し、
(半人前地蔵)「どうだった?長一。
・・一人の命は、大勢の人の人生に深く関わっているんだ。
・・君がこの世から欠けると、すべて何か変わってしまうのさ。まぁ、それは善いことも悪いこともあるんだが・・。
君の場合、もし君が居なかったら、弟は助からない。そして君の妻は結婚しない。・・当然、君の子供たちは生れない。
そして、貧乏長屋の住人たちは、大勢苦しむことにもなる。
『自分一人が居なくなっても、世の中何も変わらない』なんて、思っちゃいけないのさ。」と言いました。
(長一)「わっわかりました。お地蔵さま、お願いです。元に戻してください!もう二度と生れなかったら良かったなんて思いませんから!」と言って、長一はその場で泣き崩れてしまいました。
そこで、再び私(地蔵)が、「ちちん、ぷいぷいっ」と言って錫杖を振ると・・、
つづく(次回、最終回)
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紙芝居:「素晴らしき哉、人生!」 (その4)
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