そして(半人前地蔵の)私が、錫杖(しゃくじょう=杖)をパッと振ると、なんと目の前の世界が、一瞬ピカッと光り輝きました。
そして、言いました。
(半人前地蔵)「さぁ、長一。望みどおり、君の存在を消して上げたよ。・・君は生れなかったことにした」と。
すると長一は、「変なこと言わないで下さいよ。ちゃんと私はここに居ますよ。・・それじゃ、ここに居る私はいったい誰なんですか?」と言い返しました。
(半人前地蔵)「誰でもないよ。君は〔名無しのゴンベェ〕だ。町の人は、誰も君を知らないはずだ。嘘だと思うなら、町に行って聞いてごらん。」と言い、一度私は姿を消すことにしました。
(長一)「そんな馬鹿なことがあってたまるか!? これは夢だ。・・なんだか死ぬ気も失せてしまった。・・あれっ?聞こえ無い方の耳が聞こえるぞ。不思議だなぁ・・」と、長一は一人事を言って家に帰ることにしました。
家に帰って、長一はびっくり。
なんと、家が無いのです。
その時偶然、となりのご隠居が外に出てきたので、長一はあわてて聞いてみました。
「ごっ、ご隠居さん、私の家を知りませんか?」と。
するとご隠居は、「あんた、この辺じゃ見かけん顔じゃなぁ・・。この昔の質屋の事を言っておるのか?・・ここは、十年前に店主が亡くなって潰れてしもたよ。」と答えました。
(長一)「えっ?!でも、ここには二人の子供が居て、その一人が、わたし・・」と言いかけるとご隠居は・・、
「何だって?ここには一人しか子供は居らんかったよ。しかし、その男の子も小さい頃、池で溺れて死んでしまってなぁ・・。気の毒なことじゃった」と言って立ち去りました。
(長一)「なんてこった!やはり、ここは私の家だったんだ。・・でもいったい、なぜだ?!」
そこで私が姿を現し、説明してやりました。
(半人前地蔵)「だから言ったろう。お前は生れなかった事にしたと。・・だから当然、弟は一人っ子で、助けるお前が居ないので、池で溺れて死んだんだ。・・そして、跡取りを無くしたお店は潰れる。当然のことさ」と。
「そんな馬鹿な!」と長一は叫んで、町へ向かって走り出しました。
つづく
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紙芝居:「素晴らしき哉、人生!」 (その3)
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