・・今年は〔親鸞(しんらん)聖人750回大遠忌〕の年。
普通の人はだいたい〔50回忌〕ぐらいで仏事を終えるのだが、この方は特別だ。・・まぁ、それだけ偉大な御方(聖人)なのであろう。
では、その偉大な御方のお考え(思想・哲学)は、どんなもんだったのだろうか?
「750回忌まで、盛大にお勤めされる方の人生って、いったいどんなだったの?」・・と、このような素朴な疑問を檀家さんから尋ねられ、この紙芝居を作ろうと思った。
さて、ではその「紙芝居」の原案はどうしようか?・・とは僕は迷わなかった。
正直いって、この作品しか浮かばなかった。
そう、それは「倉田百三」氏の名作『出家とその弟子』である。
高校の教科書にも掲載されたこの作品。フィクションがかなり入っているものの、僕の想像する「親鸞」像はこの作品しかない。
この作品、倉田『親鸞』像であるが、きわめて僕の好きな親鸞聖人なのである。だから紙芝居にした。
この〔全三部作〕になる、僕の作った作品では、一番長くなった『紙芝居』を、この記念すべき年に発表したいと思う。
前置きが長くなった。
それでは、はじまり、はじまり~
『出家とその弟子』第一部「悪をせねば生きれぬ人」
昔むかしの鎌倉時代。
親鸞聖人とお弟子さん達が、関東におられた頃のお話です。
この日、親鸞聖人と二人のお弟子は、旅の途中、大雪に出遭ってしまわれました。
(弟子)「お聖人様、大変な吹雪になってしまいましたなぁ・・。」
(親鸞)「ほんに困ったのぉ・・。日も暮れてしもた。」
(弟子)「あっ、あそこに灯りが一つ見えまする。あの家に一夜の宿を頼んでみましょう。」
三人は雪の中、その家を訪ねました。
トントン、トントン・・。
(弟子)「もぉし、もぉし・・、」
(子:松若)「父ちゃん、母ちゃん、誰か戸を叩いているよ。」
(母:お兼)「ほんと、何か御用ですか?」
(弟子)「・・旅の僧でございます。この吹雪で難儀しております。恐れ入りますが、一夜の宿をお願い致すことは、出来ますまいか?」
(お兼)「お前さん、旅のお坊さんですって。この雪で泊めて欲しいとおっしゃっておられますわ。」
(父:左衛門)「何っ、・・ダメだダメだ。お断りだ!・・わしは坊主が大嫌いなんだ。帰ってもらえ!」
何ちゅう事を、言いやがるんでございましょうか、この左衛門。
でも、何か理由がありそう・・。 つづく