住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「地獄のはなし」 その3

 裸にされた悪兵衛は、それから広い荒野を歩き、大きな宮殿に着いた。
 そこは〔閻魔(えんま)大王〕の宮殿であった。
 閻魔大王は、あの世の裁判官の一人で、人の生前の善・悪を裁く仕事をしていた。
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 悪兵衛は、恐る恐る〔閻魔大王〕の前まで進み、小声で言った。
 「閻魔さま、私は何ひとつ、悪いことはしておりましぇん」と。
 すると、「この嘘つきめが!! この〔浄玻璃(じょうばり)〕の鏡を見ろ!」と、閻魔大王はカミナリのような大きな声で怒り、大きな鏡を悪兵衛の前に出した。
 そこには、悪兵衛の生前の〔悪い行い〕が、みんな映し出されていた。
 悪兵衛は首をうな垂れて「あぁ、あの時、あんな事をしなければ良かった・・」と呟いた。
 「悪兵衛、お前は地獄往きじゃ!」と、閻魔大王の判決が下ったその時・・、
ファイル 588-2.jpg
 「閻魔さま、待って下さい」と、優しい声が聞こえた。
 そして、そこには〔地蔵菩薩〕が立っておられた。
 「あぁ、お地蔵さま、さま、さま、助けてください!ヘルプミー」と、悪兵衛は〔地蔵菩薩〕の衣に取りすがった。
 しかし〔地蔵菩薩〕は、
「私はお前を助けることはできません。私の仕事は、苦しむ者と共に、一緒に苦しむ事。そして、その苦しみを和らげてあげる事。それだけなのです。・・お前を救えるのは、これまでにしてきた、お前の行いだけです。 確かにお前は悪いことばかりしてきました。・・しかし、お前は道端に立つ私に手を合わせてくれましたね。そして、一度だけ、苦しむ者を命がけで助けた事がありましたね。・・今、私がここに居るのも、その事があったからなのですよ。・・又、お前は今、心から自分の行いを反省しています。・・だから、私から閻魔さまに頼んでみましょう。
 閻魔さま、この悪兵衛を、もう一度元の〔人間世界〕に、戻してやってはいただけませんか?・・こんどは、きっと善い行いを積むでしょう。」
 それを聞いて、閻魔大王は、又じっと〔浄玻璃〕の鏡をご覧になり、そして言った。 つづく 

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