さて回収車でやって来て、選ばれて助かった子犬達は、その後どうなったでしょう。
この子犬達は、最低一ヶ月はセンターで飼育されます。
人や他の犬に慣らされてから、新しい飼い主が待つ譲渡会(じょうとかい)にだされるのです。
人に捨てられ、ここで一度は救われた命が、又人間の身勝手で捨てられることのない様に、しっかりと子犬の社会化トレーニングが行なわれるのです。
犬の世話は、ただ餌をやり散歩に連れ出せば良いというのではありません。
たくさんの人間に可愛がられて抱いてもらう事で、人間への信頼を深めた子犬は誰からも可愛いがられる犬に育つのです。
さあ、新しい飼い主との出会いの日、「譲渡会」がやって来ました。
しかしその前に、犬を飼いたいと希望する人達に事前、講習会を受けてもらいます。
この講習会では「命を預かる責任の重さ」を感じてもらう為に、犬が殺されてゆくビデオを見てもらいます。そのビデオを見て涙ぐむ子供や眉間にシワ寄せる人もいますが、犬達のその最後は、きっとこの人達に「その命、無駄にはしない」というメッセージを語りかけるに違いありません、
小さな命を愛し大切にしようとする時、人の心に幸福感が生まれ、その心は満たされます。
心が満たされた時、人は生きている事に喜びを覚えます。
つまり、ペットを幸せにする事は、自分も幸せになる事なのです。
さてさらに講習会では、飼い主募集にいくつかの厳しい条件を出しています。
たとえば、
[家族全員が動物を飼うことに賛成ですか?]
[死ぬまで、飼えますか?]
[経済的、余裕はありますか?]
[ご近所に迷惑を掛けずに飼えますか?]
など、八つの項目があり、すべてに同意できない人には譲ってもらえません。
こうして「命を預かる責任の大きさ」を理解して下さった人だけに、子犬達は旅立ってゆくのです。
きっと、子犬達に未来に幸せが待っているでしょう。
今、センター内には、動物慰霊碑が一つ建っています。
今日は殺処分の日。
一人の職員が手に小さな花束とドックフードを持って、手を合わせにきました。
いつか、「犬や猫達の処分がゼロ」となり、この慰霊碑が不要になる事を願いつつ、今日も自ら仕事に真摯に向き合い、「日本一の愛護センター」を目指す職員達の奮闘は続いています。
おしまい
(終わりに)
僕がこの紙芝居の取材に、四国の動物愛護センターにお邪魔したのは、今から10年ほど前だ。
所長さん達にいろんなお話を聞かせていただき、又施設内を案内していただき、深い感銘を受け、紙芝居がより深いものになった気がしている。
今も犬たちの遠吠えのような悲しい声を覚えているし、ここには描かなかったが、子猫たちの死骸が、一輪車でまるで雑巾のように運ばれてゆく光景が今も鮮明に目に残っている。
この紙芝居は、今だからこそ皆さんに観て頂きたい一作品である。