(はじめに~)
昨年(2010年)の赤ん坊『命名ランキング』ナンバー1は、男の子が〔大翔(はると・ひろと)〕、女の子が〔さくら〕だそうだ。(明治安田生命(株):発表)
名前というのは、親の願いが一杯詰まっていて、結構、名前負けしてしまうような〔名前〕も多い。(『直樹』という名の僕も、完全に名前負けしているその一人である。)
又、最近では、その反対に親が遊び半分のような気持ちで(外国人の名を漢字で当てはめたような)〔名〕を付けてるようなものも多く見かける。(国際化社会やから、それもエエか?)
・・だが、一昔前にあった『悪魔くん』命名騒動は、どうも頂けん。 なぜなら、その子の人生を、名によって左右してしまうかもしれんからだ。
では、名を変えたら、その人の運命は好転するのだろうか?・・僕は、そうとも言えんような気がする。(やはり行動が伴わねば、名を変えただけでは、ダメだろう。)
・・でもでも、本名〔松山数夫〕が、〔松山まさる〕になって、〔一条英一〕になって、〔三谷謙〕に変わって、最後《五木ひろし》になって売れた芸能人もいるので、芸能界では、名も大切なのかも・・。でも、それはやはり、実力が伴ってたからなのやろなぁ・・。
・・ああっ、頭の中が分裂して来た!(もともとかもしれんが・・〔笑い〕)
さて、釈尊も自分の息子の名を(子は修行の妨げという意味で)〔ラーフラ=妨げ〕と名付けた。今なら大問題の部類に値するだろう!?・・この話は、いずれゆっくりしたい。)
さてさて、横道ばかりにそれたが、今からお話する『紙芝居』の主人公の名は、「意地悪(いじわる)」と言った。
誰が付けたのか、・・もちろん本人は『大不満』であった。
さぁ、そんな『いじわる君』の〔名前〕の悩みのお話です。はじまり、はじまり~。
昔むかしのインドのお話です。
ある町に、お坊さんになる学校がありました。
そこに、一人の珍しい名前の生徒がおりました。
その名を『意地悪夫(いじわるお)』と言いました。
本当のところ、この子は「意地悪」なんか、一つもした事がないくらい優しい子でした。
しかし、仲間の生徒がおもしろがって、何度もその子の名を呼びからかいました。
いじわる君は、できるだけ気に掛けないようにしていたのですが、或る日、とうとう我慢できず、先生に相談しに行くことにしたのでした。
「先生、僕に違う別の〔名前〕を付けてもらえませんか? 意地悪なんかしてないのに、そう呼ばれるのがとても辛いのです。お願いします。」と、いじわる君はそう言いました。
それに対して先生は、
「そうか、そんなにその名が嫌なら、変えるが良い。
だが、せっかく変えるのだから、君の一番好きな名前に変えるのが好かろう。・・それでは、明日から《三日間》ほど旅に出て、好きな名前を探して来なさい。」と、言われました。
いじわる君は大喜び。
次の日、早速仕度を整え出発しました。
最初の日、村の公園に行きました。
そこには、たくさんの子供たちが遊んでいて、みんないろんな名前で呼び合っています。
でも、どれもみんな、聞いたことがあるような名前ばかりでした。
「せっかくだもの、もっと珍しい名前を探してみよう!」と、いじわる君は、その場を後にしました。
そして、いじわる君が町に入った時のことです。
向こうから〔お葬式〕の行列がやって来ました。
その中で、まだ若いお母さんらしき人が、涙を拭き拭き歩いて来るのが見えました。
いじわる君は、そっと、そのお母さんらしき人に近づいて尋ねました。
「あのー、どなたが亡くなられたのですか?」と。
するとその女性は、
「まぁ、坊や。 ちょうどあなたと同じぐらいの男の子が、病気で亡くなったのよ。・・可哀想に、こんなに早く亡くなるなんて・・。」
いじわる君はそれを聞いて、「それは、お気の毒です。お悔やみ申し上げます。・・あの~、それでその子は何というお名前だったのですか?」と聞くと・・、
すると女性は、「それがねぇ、この子の名は『元気』君と言ったのよ。・・名前負けしたのかしらねぇ。」と答えました。
それを聞いて、いじわる君はびっくり。「・・可哀想になぁ。『元気』という名前なのに、そんなに早死にしてしまうなんて。」
そう、いじわる君は思いながら、合掌してお葬式の列を見送りました。 つづく