「・・おぉっ、わしらの往かんかった『地獄』とは、いったいどんな処何じゃろうのう・・?
恐ろしいトコなんじゃろうのぅ。
苦しいトコなんじゃろうのぅ。
考えただけでも、身震いがするわい」と、思わず〔宗兵衛〕は手を合わせた。
それを聞いて〔おかん〕も、
「そうですねぇ。・・私達は幸せなことに、仏様のお慈悲によって、この『極楽』に来れたのですから、ありがたいことです。ナムアミダブ、ナムアミダブ・・。」と同じように手を合わせた。
「そういえば、わしの奈良の友人から聞いた話じゃがな、〔奈良屋:悪なんやら〕という悪徳商人がおって、一度死に掛けて『地獄』を見て来たそうじゃ。そりゃ、恐ろしげな世界じゃったそうじゃよ。・・その後、〔悪なんやら〕は、善人になって、生き仏のようになったそうじゃよ。・・まるで、毎日が『極楽』の住人のような感じで生活しておるそうじゃ。」と、〔宗兵衛〕は続けて言った。
こうして二人は、しばらく、自分たちが往かなかった『地獄』の世界について、想像をめぐらし、あーだこーだと、話し合った。
それは、『奪いあう世界』でもありそうな、
『憎み合う世界』でもありそうな、
『悲しみの続く世界』でもありそうな、
『絶え間ない苦しみの続く世界』でもありそうな、・・そんな事を二人は、一生懸命に(具体的に)想像して、話し合った。
そして、やがて〔宗兵衛〕は言った。
「おかんよ、どうやら、『地獄』は、シャバの世界、つまりわしらの『人間世界』にもあるような気がするのぉ・・。」
それを聞いて〔おかん〕も、
「ほんに、自分たちの勝手さが作る『人間』世界そっくりのようですねぇ」と言った。
その時だった。
突然、アミダ如来様が二人の前までやって来られ、「そこのトコに気づけば、もうこの『極楽』での修行は終わりじゃ!」と言われた。
つづく(次回、最終回)
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紙芝居:「極楽のはなし」 その5
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