「そんな事もございましたねぇ‥」と恵信尼様は答えられた。
親鸞聖人は続いて、「恵信尼よ、あれから18年が経つ。わしの他力の信心も確固たるものになったと思っていた。
‥が、しかしじゃ、この風邪の高熱の苦しみの中、わしは夢の中で必死でお経を読んで仏様に救ってもらおうとしていた‥。
お経の文字が一文字一文字、光り輝きはっきり見えたのじゃ。
その時、わしは気がついた。
『ああ、又やってしもてる。』と。
あれだけ(18年前に)反省したのに、又同じような事をしている自分がいる。
‥なんと、まだ『仏様の功徳にすがろうとする』自分が残っている。
人間の煩悩、いやわしの煩悩とはなんと強いものか!と思い知った。
それでわしは『まは、さてあらん』=(また、やってしまった。でもこれからは、絶対止めなあかんな)とつぶやいた訳なのじゃ。
「このような強い煩悩があっても、阿弥陀仏という仏様は必ず我々を救ってくださる。
煩悩あるがままに、救いとって下さる阿弥陀仏さま、我々は喜ばねばのう。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。」
そして親鸞聖人は、それからしばらくして風邪の症状も改善され、お元気になられたそうです。
そしてこのお話は、妻の恵信尼様が、お手紙として娘さまに書かれて、後世に『親鸞聖人の寛喜の内省』と呼ばれて大事に残されております。
(稲田御坊西念寺 茨城県)
※『まは、さてあらん』という言葉は、いろいろな解釈があります。
浄土真宗聖典註釈板などには、「やはり、そうであったか」と現代語に訳されていたり、又、「これからはそうしよう」と現代語解釈されていたりもします。あまりに短い文なので、解釈が難しいそうです。ちなみに、ぼくは、拙我流で、『ああ、またやってしもた。これからはやめとかなあかんなぁ』としました。変な解釈訳ですんません。合掌
終わり
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紙芝居『まは、さてあらん‥』(その3 最終回)
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