私の僧名は[策伝(さくでん)]と言います。
・・が、自称、つまり今でいう芸名みたいな、ペンネームみたいなモンは、『平林 平大夫(ひらばやし ひらだゆう)』と言いましてん。面白い名前でっしゃろ⁉
この名前をなぁ、『たいら・ばやし』と読んだり、はたまた『ひら・りん』と読んだりする、ムチャクチャな(ワシより)おもろい坊さんがおったんや。・・ちゃんと『醒睡笑』に書いた、ホンマの話やで。
それを、『とかく、当て推量では、何も当たらんねんでぇ』と、ちょっとした[教え]を入れて、ワテが小話にしましたんや。
それが後世、『平林』という[上方落語]の名作に変わりましたんや。
どいつや、ワテの名前をネタギャグにした奴は⁉ワハハハッ。
では、今回は『上方落語バージョン』で小話を聞いてもらいまひょか。はじまり、はじまり~。
ここは、大阪のとある大店。
主人が、丁稚を呼んだ。
「お~い、定吉。」
「へ~い。なんでんのん、旦那はん。」
「おぉ、お前は返事が大きいのがええ。ちょっと本町まで、使いを頼む。・・ええか、この手紙を『平林(ひらばやし)』さんに、渡してほしいんや。わかったか⁈」
「へ~い。」
「ホンマにわかったんか⁈」
「へ~い。」
「・・ほな、家の敷地の目隠し壁は何や?」
「へ~~い、塀~。」
「おほんだら!はよ、行ってこ~い。」
「へ~~~い。」
「大丈夫かいな⁈」
「なぶったった。ああっおもろ。
あっあっあかん⁈ 笑とったら、肝心の手紙の名前を忘れてしもた。困ったなー。ワテ、文字を読まれへんし・・。
あっ、あそこに、ぎょうさん人がおる。聞いてみたろ。」
つづく