恨み、憾み、怨み・・・。
この〔怨(ウラ)み〕の漢字が、一番おどろおどろしいそう・・。
〔怨み〕について、おシャカ様は次のようにおっしゃっている。
『実にこの世においては、怨みに報いるに、怨みを以ってしたならば、ついに怨みのヤムことがない。怨みを捨ててこそヤム。これは永遠の真理である。(ダンマパダ)より』と・・。
これは、〔怨み〕について述べられたおシャカ様のお話を『紙芝居』にしたものである。
『怨みを捨てて・・・』 (仏教もの32)〔律蔵大品〕より
昔、インドに〔チョウサイ王〕という立派な王様が治める小さな国があった。
・・が、ある時、隣の〔ブラフマダッタ王〕の大国に突然攻められ、あっという間に滅ぼされてしまった。
燃え上がる炎の中、〔チョウサイ王〕と后、それに息子の〔チョウジュ王子〕は命からがらお城を脱出した。
・・が、やがて、王と后は捕えられ、大衆の面前で公開処刑をされる事になった。
運良く一人逃げ切れた〔チョウジュ王子〕は、処刑当日、大衆に紛れ込み、この父と母の最期をただただ見つめることになった。
槍が父の身体を突き立てようとしたその瞬間、偶然、父は〔チョウジュ王子〕と目が合い、次のように叫んだ。
「長く見ることなかれ!怨みは、怨みなきによってのみ静まるぞ!」と・・。こう叫び、父は死んでいった。
怨みに燃える王子。この父の最後の言葉の意味など考えようともしなかった。
復讐を誓う王子は、変装し、機会を得て近づき、やがて隣国の〔ブラフマダッタ王〕に雇われ、信頼を得て側近にまで登り詰める。(なんか〔シャア〕みたい・・)
『・・そして、さぁ皆さん、いよいよ、今回のその時がやってきます。〔その時歴史が動いた〕の番組みたいに読んで下さい(余談でした・・)』
ある日のこと、〔ブラフマダッタ王〕は、家来達をつれて森の奥深くに猟に出た。
そして、やがて道に迷い、王は〔チョウジュ王子〕と二人だけとなり、疲れ果てた王はチョウジュ王子の膝枕でうたた寝をし始めたのだった。
「これは千載一隅のチャンス!父上、ついに怨みをはらす時が来ました!」
・・と、〔チョウジュ王子〕は、王の首に剣を当てた。
その時である。なぜか、亡き父の言葉が王子の胸に蘇ってしまった。
『怨みは、怨みなきによって静まる・・』というあの言葉が・・。
「・・父上、私はここで怨みをはらしたとしても、私の心は永遠に静まらないのでしょうか・・?」
こう思った瞬間、王子の力はぬけてしまい、剣を落としてしまった。
その音に気づいた〔ブラフマダッタ王〕は、目を覚まし事の次第を聞く。
すべてを話す王子。その話に腰を抜かさんばかりに驚く王。
しかし、王はこの《チョウサイ王の遺言》の話に深く心を打たれ反省した。
そして、自分の犯した罪を深く詫び、その後〔チョウジュ王子〕に国を返して、両国は末長く親睦を続けたという。 おしまい
(余談) この『紙芝居』、何年か前に神戸市民の『平和のつどい』の祭典でやらせてもらった事がある。
その時、聴衆の一人からも「その『紙芝居』は、一遍、ブッ○ュ大統領に見てもらわなあきまへんなぁ!」と感想を言われて、大笑いしたのを覚えている。