(西行)「・・出家を決意した時、わしはすでに結婚しておった。 そして、幼き子供も一人おったんじゃ。
僧侶になろうと決意し、家に帰った時の事じゃった。・・わしの子供は、わしを見つけ、喜んですがりついて来た。
わしの心は動揺した。・・・が、決めた事じゃ。心のとらわれを振り払おうと、わしは心を鬼にして、その子供を縁側から蹴り落とした!
子供は泣き、妻は動揺して怯えた。
・・が、しかし、わしは急いで部屋に入って髪を切った。」
「・・おそらく、あなた方の疑問は唯一つ。
なぜ、出家したかったのか?という動機を知りたいのじゃろう。・・それは秘密じゃ。人は誰でも内緒にしておきたき事があるじゃろう。
・・が、世間の人達は色々と噂をした。
『西行は、さる高貴なお方との秘密の恋に破れ、世を捨てたのだ』とか。
又『いや、親友の突然の死に、人生の無常を感じての出家だったのだ』とか。
いずれにせよ、今となってはどうでも良い事。仏縁があったという事じゃろう。
えっ、それでは、捨ててしまった妻と子は、その後どうなったかとお聞きか?・・わしは、妻子のことはわしの弟にちゃんと頼んでおいた。・・生活できるようお金を預けてな。
しかし、のち、妻も子もわしと同じように仏門に入ってしまったがな・・。今は罪な事をしてしまったと思っておる。 つづく」
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紙芝居:「願わくば、花の下にて春死なん~西行法師の一生」その3
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