これは〔良寛〕さま、60才の頃のエピソード。
いつものように、庵(イオリ)近くにある厠へ行って用を足して、何気なく床下を覗いて見ると、一本の〔竹の子〕が、頭を床板に当てて、窮屈そうにしておりました。
「おやおや、これは可哀想に・・。お前は何で黙っておったんじゃ。今、楽にしてやるからのぉ」と、まるで人間の子に話すようにして、急いで金槌とのみを持って来て、床に穴を開けました。「そーら、これで楽になったじゃろう。ぐんぐん伸びろよ!」と、言って。
竹の子は日毎に大きくなりました。
ところが、ついに〔竹の子〕の頭が屋根まで伸びて、それ以上伸びなくなってしまいました。
「これは困った。竹の子よ、どうすれば良いかのぉ?」
そして、今度はロウソクの火で、屋根のワラを焼いて、穴を開けようとしたのですが、風が強く、火事になってしまいました。(ここまでいくと、もはやコメディやね・・。)
その煙を見た、村人たちは、急いで駆けつけ炎を消しました。
「良寛さま、大丈夫ですか?」と言われ、「いや、ワシは大丈夫じゃが、竹の子がのう・・。気の毒なことをした」と言って、黒く焼けた〔竹の子〕に手を合わす〔良寛〕さまでした。
〔良寛〕さまの庵には、子供のお客以外にも、招かざる客が来ることがありました。
・・そう、泥棒です。
「ふーん、何か盗んでやろうと思って入ったが、何一つない庵じゃのう」と、泥棒はつぶやきました。
そんな様子を〔良寛〕さまは、薄目を開けてじっと見ておりました。
そして、ついに泥棒は、〔良寛〕さまの寝ている布団を盗もうと引っ張りはじめたのでした。
「しょうがない泥棒じゃのぉ。よっぽど貧乏なのじゃろう。・・よし、こんなボロ布団でも良かったら持っていけ。う~ん、むにゃむにゃ・・」、ゴロンッと、
ころがり、泥棒に盗りやすいようにしてやりました。
泥棒は喜んで盗んで行きました。
後に残った〔良寛〕さまは、一人ポツンとお月さまを見つめ、「おおっ、一句できた!『盗人に盗り残されし、窓の月』。お月さんや、あんたは盗られんで良かったのぉ・・」とつぶやいたそうです。
・・次回、エピローグ。その最晩年を書かせてもらいます。 つづく
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紙芝居:『良寛さま』 その4
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