住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:『天親菩薩三兄弟』 (その2)

昔々の〔北インド〕のお話。
〔ケンダラ〕という国に、たいへん仲の良い三兄弟が住んでいました。
この兄弟の名は、長男を〔無着(ムチャク)〕さま、次男を〔天親(テンジン)〕さま、三男を〔獅子覚(シシカク)〕さまといって、三人ともたいへん頭が良く、大きくなって皆、お坊さんになりました。
 長男の〔無着〕さまと、三男の〔獅子覚〕さまは、『自分一人だけが救われるのではなく、皆も一緒に、仏様によって救われる教え《大乗(ダイジョウ)》』という名の学問を勉強しておりました。 
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 ところが、次男の〔天親〕さまは考え方が違っていました。
「人のことなど、かまってられるかい!とにかく、まず自分一人が救われる方法を勉強したいんだい!」と、《小乗(ショウジョウ)》という名の学問を勉強していたのです。
 この「自分が一番大切だ!」という考えの「串団子次郎」、いや、〔天親〕さまは、一生懸命に《小乗》を学び、やがて、仏教学者たちも、言い負かせる程になりました。
 そして、「そうだ、この教えをみんなに説いて回ろう!」と決心し、町に出かけて行きました。
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「みなさーん、悟りを得るには修行をしなければいけません!今すぐ、出家して皆で僧侶になりましょう!それしか救われる方法はないのですよー!」と、町で辻説法を始めました。
 しかし、町の人は「でっでも、私には家族があります。あっしが出家したら家族はいったい、誰が養っていけばよいのですかい?」と答えました。
「・・そんなことでは救われませんよ!」と、〔天親〕さまは必死で説得しましたが、みんな、話もそこそこに「ダメだこりゃ!」と〔故・いかりや長助〕のように言って去っていきました。
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 そんな噂が、弟想いの「串団子一郎」こと〔無着〕さまと、兄さん想いの「串団子三郎」こと〔獅子覚〕さまの耳に入りました。
 「おい、獅子覚。どうやら天親は、出家しなければ救われないと、町で言い回っているらしいぞ」。
「はい、兄さん。その話は私の耳にも入っております。天親兄さんの《小乗》の考え方も一つの方法ですが、あれでは皆を混乱させてしまうだけです。なんとかしなければ、天親兄さんは益々孤立してしまいますよ!」と相談し合い、・・やがて「あっそうだ!僕に良い考えがあります。この前、テレビの吉本新喜劇で見た方法です!」と〔獅子覚〕さまは言いました。
「何々、それはどんな方法だ?」と身を乗り出すお笑い好きの〔無着〕さま。
「ごにょ、ごにょ、ポニョ・・」と、〔獅子覚〕さま。
「おおっ、それは良い考えだ!」と、すぐに話はまとまり、さっそく実行に移す段となりました。
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それから何日かしての事です。
〔天親〕さまの元に、弟からの一通の手紙が届きました。
その中身は、「たいへんだ、兄さん!無着兄さんが重い病気になって倒れてしまったよ。明日をも知れぬ命なんだ!早く帰ってきて! 獅子覚より」と、書いてありました。
 「これはたいへんだ!」と、〔天親〕さまは急いで旅の仕度をして、兄さんの元に出発しました。 つづく。

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