住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:『夫婦善哉』 その三

 『夫となり、妻となれば、他人に欠点と見えるものも、受け入れることが出来る。
 誰にも似ず、誰にもわからない二人だけの理解から、夫婦の愛というものが始まるのだ。』 〔山本周五郎 原作「柘榴」より〕
 以上、余談・・。
 
 それでは〔その三〕のはじまり~。
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 あくる日から〔蝶子〕は、〔柳吉〕の仕事を探し始め、まん良く《カミソリ屋》の店員の仕事を見つけてきた。
 そして〔柳吉〕はその店で働き始めたのだが、元々ボンボンの彼は三ヶ月で店主と喧嘩し、辞めてしまった。
 そんなある日、〔柳吉〕の元妻が、実家で《肺》が悪くなり亡くなったと噂を聞いた〔蝶子〕は、「寝覚めが悪い」と位牌を作り、毎日花を供え、手を合わせて拝んだ。
 そんな姿を見て〔柳吉〕は何も言わなかった。
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 やがて二年が経ち、〔蝶子〕のお金が貯まったので、芸者を辞め《カミソリ屋》を始めたが、流行らず店は閉めた。
 しかし諦めず、次は借金をして《おでん屋》を始めた。
「ワイが腕ふるって、エエ味のもん食わしたる」と〔柳吉〕は今度は張り切った。
 店の名前は、お互いの名を一字づつ入れ『蝶柳』とした。
 店は流行った!
 そんなある日、〔柳吉〕の妹が《養子》を貰って結婚する事となった。
 自分も出席しようと張り切っていた〔柳吉〕であったが、実家から「出席するな!」と連絡が入り、ヤケになった〔柳吉〕は、又、店のお金を全部持ち出し、遊びに使ってしまった。
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「おっおばはん、殺生やで!」とお金を使い込んだ〔柳吉〕に〔蝶子〕の折檻が始まった。
 天井に頭を打ちつけられ、「痛たた・・、もう二度とお金の使い込みはしません!」と誓う〔柳吉〕であったが、しばらくすると又、《放蕩》は始まり、結局《おでん屋》も閉める事となった。
 そして三たび、芸者に戻った〔蝶子〕であったが、決して《商売の道》を諦めはしなかった。
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 お金が貯まると、今度は「果物屋をやろう!」と思いつき、店を開いた。
「安いスイカでっせー!」と、元々キレイな声で愛嬌のある〔蝶子〕に、お客は大勢集まって来て、店は流行った。
 ・・が、今度は〔柳吉〕が病気になってしまった。
 病名は《腎臓結核》であり、長期の入院が必要となった。
 結局、看病に忙しい〔蝶子〕は、店を閉めざるを得なかった。
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 入院中の〔柳吉〕に、ある日、妹と娘がお見舞いに来た。
〔蝶子〕は「ハッ」と緊張したが、妹は「姉(ネエ)はんの苦労は、お父さんもこの頃、よう知って張りまっせ。『よう尽してくれてる』と言うてはります」と、〔蝶子〕にそっとお金を握らせた。
 本当は同情の言葉だったかもしれないが、〔蝶子〕は、その言葉を信じようとした。
〔柳吉〕の父親に解ってもらうまで、十年かかった。
 又、「姉はん」と言われたのも嬉しかったのである。
 つづく・・。
 

 
 

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